要指導医薬品や一般用医薬品(いわゆるOTC医薬品)の販売において、一番の悩みどころは科学的根拠に関するデータが少ないことではないでしょうか。
今回のコラムは、OTC医薬品の科学的根拠に基づく情報提供ができないという問題提起だと思って頂ければ幸いです。
OTC医薬品の添付文書
OTC医薬品の添付文書は、一般の生活者が分かり易い様に邦文記載されています。
その分、科学的根拠となる詳細なデータがありません。
記載がない事項
- 副作用の発生頻度
- 使用後どのくらいで吸収されて、排泄されるか(体内動態)
- 臨床成績や薬理作用
- 主要文献など
医療用医薬品にはこれらのデータが添付文書に記載されている上、法的に必須なものではありませんが、より詳細なインタビューフォームが多くの製品に存在します。
問題点
例え同じ成分であっても、添加物が違う可能性もあり、また医療用医薬品と一般用医薬品はそれぞれ別に承認されているため、医療用医薬品のデータをそのまま一般用医薬品の情報とするのは、不適当です。
その上で、数あるOTC医薬品の中から、どのように科学的根拠に基いた情報提供をしていけばいいのでしょか。
例えば、同じ解熱鎮痛剤でも沢山の医薬品がありますが、それぞれ適切に判断できる情報はありますか?
- 「胃に優しい成分が配合」・・・果たしてどのくらい胃の副作用が軽減するのでしょうか。
- 「痛みをすばやく抑える」・・・どのくらいすばやいのでしょうか。
- 「つらい痛みをよく抑える」・・どのくらいの確立で痛みが改善するのでしょうか。
- 「胃分不快感の副作用」・・・・どのくらいの確立で起こるのでしょうか。
配合成分の違いによる製品の特長はそれぞれありますが、それに基づく科学的データってどこから得ればいいのでしょうか。
一般の生活者が、数ある医薬品の中から一つを選ぶ際に登録販売者や薬剤師に相談して知りたい情報は、医薬品のパッケージに書いてあるものではなく、比較検討できる詳細なデータではないでしょうか。
今後の課題
先ほども話した通り、OTC医薬品の添付文書は、一般の生活者が分かり易い様に邦文記載されています。そのため、添付文書に専門的な情報を載せることは不適当です。
しかし、OTC医薬品を販売する薬剤師や登録販売者のため、引いては利用する一般の生活者のためにも、適切な情報提供ができる科学的根拠となるデータを添付文書とは別の形で情報公開する必要があるのではないでしょうか。
もっと言えば、それをPMDA等でデータベース化することで、情報の信頼性と利便性を担保するべきではないでしょうか。