登録販売者試験の解説とポイントを過去問題にフォーカスして記載していきます。
厚生労働省の試験問題作成の手引きを基に分かり易い内容に変えて解説しています。
過去問題から作成したポイントテストもありますので、是非解いて見てくださいね。
独学で学ばれている方も含め問題なく解けることが実感できるかと思います。
また第3章全体のポイントについては、第3章-4日目:Ⅰ-①:かぜ薬をご覧ください。
5 鎮暈薬(乗物酔い防止薬)とは
めまい(眩暈)は、平衡感覚に異常が生じて起こる症状で、内耳にある平衡器官の障害や、中枢神経系の障害など、さまざまな要因により引き起こされます。
鎮暈薬(乗物酔い防止薬)は、乗物酔い(動揺病)によるめまい、吐きけ、頭痛を防止し、緩和します。
1)代表的な配合成分、主な副作用
抗めまい成分、抗ヒスタミン成分、抗コリン成分及び鎮静成分には、いずれも眠気を促す作用があります。
鎮暈薬(乗物酔い防止薬)には、吐きけ止め成分もありますが、つわりに伴う吐きけへの使用は適当でありません。
(a) 抗めまい成分
- ジフェニドール塩酸塩
内耳にある前庭と脳を結ぶ神経(前庭神経)の調節作用のほか、内耳への血流改善作用を示します。
抗ヒスタミン成分と共通する薬理作用も示します。
服用時の注意点
抗ヒスタミン成分や抗コリン成分と同様な頭痛、排尿困難、眠気、散瞳、口渇が現れることがあります。
排尿困難の症状がある人や緑内障の診断を受けた人では、使用前に医師、薬剤師に相談することが望ましいです。
(b) 抗ヒスタミン成分
延髄にある嘔吐中枢への刺激や内耳の前庭における自律神経反射を抑えます。
また、抗ヒスタミン成分には抗コリン作用を示すものが多くあります。抗コリン作用も乗り物によるめまい、吐きけなどの防止・緩和に寄与すると考えられています。
- ジメンヒドリナート
- メクリジン塩酸塩
これらは専ら乗物酔い防止薬に配合されてます。
メクリジン塩酸塩に関しては、ほかの抗ヒスタミン成分と比べ作用発現が遅く持続時間が長いことが特徴です。
- プロメタジン塩酸塩
プロメタジンを含む成分は外国において、乳児突然死症候群や乳児睡眠時無呼吸発作のような致命的な呼吸抑制の報告があるため、15歳未満の小児では使用してはなりません。
その他、乗物酔い防止薬に配合される抗ヒスタミン成分には次のものがあります。
- クロルフェニラミンマレイン酸塩
- ジフェンヒドラミンサリチル酸塩
(c) 抗コリン成分
中枢に作用して自律神経系の混乱を軽減させるとともに、末梢では消化管の緊張を低下させる作用を示します。
- スコポラミン臭化水素酸塩水和物
乗物酔い防止に古くから用いられている抗コリン成分です。
消化管からよく吸収され、ほかの抗コリン成分と比べて脳内に移行しやすいとされていますが、肝臓で速やかに代謝されるため、抗ヒスタミン成分などと比べて作用の持続時間は短いのが特徴です。
スコポラミンを含む成分としてロートエキス(ロートコンの抽出物)が配合されている場合があります。
(d) 鎮静成分
- ブロモバレリル尿素
- アリルイソプロピルアセチル尿素
乗物酔いの発現には不安や緊張などの心理的な要因による影響も大きく、それらを和らげることを目的として配合されます。
(e) 中枢神経系を興奮させる成分
(キサンチン系成分)
- カフェイン
- ジプロフィリン
脳に軽い興奮を起こさせて平衡感覚の混乱によるめまいを軽減させます。
カフェインには、乗物酔いに伴う頭痛を和らげる作用も期待されます。
抗ヒスタミン成分などの眠気を取るためではありません。
(f) 局所麻酔成分
- アミノ安息香酸エチル
胃粘膜への麻酔作用によって嘔吐刺激を和らげ、乗物酔いに伴う吐きけを抑えます。
アミノ安息香酸エチルが配合されている場合には、6歳未満への使用は避ける必要があります。
(g) ビタミン成分
- ピリドキシン塩酸塩
- ニコチン酸アミド
- リボフラビン
吐きけの防止目的で補助的に配合されます。
ポイントテスト1
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)ジフェニドール塩酸塩は、内耳にある前庭と脳を結ぶ神経(前庭神経)の調節作用のほか、内耳への血流を改善する作用を示す。
(2)ジメンヒドリナートは、外国において、乳児突然死症候群や乳児睡眠時無呼吸発作のような致命的な呼吸抑制を生じたとの報告があるため、15歳未満の小児では使用を避ける必要がある。
(3)スコポラミン臭化水素酸塩水和物は、乗物酔い防止に古くから用いられている抗ヒスタミン成分である。
(4)アミノ安息香酸エチルは、胃粘膜への麻酔作用によって嘔吐刺激を和らげ、乗物酔いに伴う吐きけを抑えることを目的として配合されている場合がある。
(5) 抗コリン成分の主な副作用として、縮瞳がある。
回答と解説
ポイントテスト1
(1)〇
(2)×:ジメンヒドリナートではなく、プロメタジンを含む成分。
(3)×:抗ヒスタミンではなく、抗コリン
(4)〇
(5)×:縮瞳ではなく、散瞳
2)相互作用、受診勧奨等
【相互作用】
抗ヒスタミン成分、抗コリン成分、鎮静成分、カフェイン類等の配合成分は、ほかの医薬品に使用されていることが多く、重複してしまうため、併用は避ける必要があります。
【受診勧奨等】
3歳未満では乗物酔いがほとんどないとされており、乗物酔い防止薬に3歳未満の乳幼児向けの製品はありません。
高齢者は、平衡機能の衰えにより、めまいを起こしやすく、聴覚障害に伴ってめまいが現れることも多くあります。
めまいがたびたび生じる場合には、基本的に医療機関への受診が必要です。
ポイントテスト2
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)乗物酔い防止薬に3歳未満の乳幼児向けの製品はない。
回答と解説
ポイントテスト2
(1)〇
6 小児の疳を適応症とする生薬製剤・漢方処方製剤(小児鎮静薬)
小児では、身体的な問題がなくても、夜泣き、ひきつけ、疳の虫等の症状が現れることがあります。
小児鎮静薬は、それらの症状を鎮めるほか、小児における体質改善の改善を目的とする医薬品です。
比較的長期間(1ヶ月位)継続して服用されることがあります。
なお、身体的な問題がない場合は成長に伴って自然に治まるのが通常です。
1)代表的な配合生薬等、主な副作用
小児の疳は、「乾」という意味もあり、痩せて血が少ないことから生じると考えられています。小児鎮静薬には鎮静作用のほか、血液の循環を促す生薬成分が配合されています。
鎮静と中枢刺激のように相反する作用の生薬成分が配合される場合もありますが、身体の状態によって反応が異なり、総じて効果がもたらされると考えられています。
生薬成分
(a) ゴオウ、ジャコウ
ゴオウ:
ウシ科のウシの胆嚢中に生じた結石
ジャコウ:
シカ科のジャコウジカの雄の麝香腺分泌物
共に強心、緊張や興奮を鎮め、血液の循環を促す作用がある。
(b) レイヨウカク
ウシ科のサイカレイヨウ(高鼻レイヨウ)等の角
緊張や興奮を鎮める作用等を期待して用いられる。
(c) ジンコウ
ジンチョウゲ科のジンコウ、その他同属植物の材、特にその辺材の材質中に黒色の樹脂が沈着した部分を採取したもの
鎮静、健胃、強壮などの作用を期待して用いられる。
(d)その他
リュウノウ、動物胆(ユウタンを含む。)、チョウジ、サフラン、ニンジン、カンゾウ等が配合されている場合がある。
カンゾウについては、小児の疳を適応症とする生薬製剤では主として健胃作用を期待して用いられる。
漢方処方製剤
漢方処方製剤は、用法用量において適用年齢の下限が設けられていない場合、生後3ヶ月未満の乳児には使用しないこととなっています。
- 柴胡加竜骨牡蛎湯※
- 桂枝加竜骨牡蛎湯※
- 抑肝散 ※
- 抑肝散加陳皮半夏※
- 小建中湯
※を1週間位服用しても症状の改善しないときは、服用を中止して専門家に相談するなどの対応が必要です。
また※の漢方薬については、独学のポイント:第3章-Ⅰ-③:眠気に関する医薬品を参照してください。
カンゾウ,マオウ,ダイオウを含む場合
それぞれ㋕,㋮,㋟で記載
小建中湯 ㋕
体力虚弱で疲労しやすく腹痛があり、血色がすぐれず、ときに動悸、手足のほてり、冷え、ねあせ、鼻血、頻尿及び多尿などを伴うものの小児虚弱体質、疲労倦怠、慢性胃腸炎、腹痛、神経質、小児夜尿症、夜なきに適す。
カンゾウを含むため、乳幼児に使用される場合は体格の個人差から体重当たりのグリチルリチン酸の摂取量が多くなることがあることに加え、比較的長期間(1ヶ月位)服用することがあるので、特に留意される必要がある。
ポイントテスト3
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)小児鎮静薬は、症状の原因となる体質の改善を主眼としているものが多い。
(2)小児鎮静薬には、鎮静と中枢刺激のように相反する作用を期待する生薬成分が配合されている場合があるが、身体の状態によってそれらに対する反応が異なり、総じて効果がもたらされると考えられている。
(3)身体的な問題がなく生じる夜泣き、ひきつけ、疳の虫については、成長に伴って自然に治まるのが通常である。
(4)ゴオウは、ジンチョウゲ科のジンコウ、その他同属植物の材、特にその辺材の材質中に黒色の樹脂が沈着した部分を採取したものを基原とする生薬で、鎮静、健胃、強壮などの作用 を期待して用いられる。
(5)小建中湯は、体力虚弱で疲労しやすく腹痛があり、血色がすぐれず、ときに動悸 、手足のほてり、冷え、ねあせ、鼻血、頻尿及び多尿などを伴うものの小児虚弱体質、疲労倦怠、 慢性胃腸炎、腹痛、神経質、小児夜尿症、夜なきに適すとされる。
回答と解説
ポイントテスト3
(1)〇
(2)〇
(3)〇
(4)×:ゴオウではなく、ジンコウ。
(5)〇
2)受診勧奨
乳幼児は状態が急変しやすく、自分の体調を適切に伝えることが難しいため、保護者等が状態を観察し、医薬品の使用の可否を見極めることが重要です。
また小児鎮静薬を一定期間又は一定回数服用させても症状の改善がみられない場合は、ほかの原因(例えば、食事アレルギーやウイルス性胃腸炎など)の可能性も考えられるので、漫然と使用せず医療機関を受診させるなどの対応が必要です。
乳幼児ではしばしば一過性の下痢や発熱を起こすことがあるりますが、激しい下痢や高熱の場合には、脱水症状につながるおそれがあります。
ポイントテスト4
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)小児鎮静薬を一定期間又は一定回数服用させても症状の改善がみられない場合は、その他の原因(例えば、食事アレルギーやウイルス性胃腸炎など)に起因する可能性も考えられるので、漫然と使用を継続せず医療機関を受診させるなどの対応が必要である。
回答と解説
ポイントテスト4
(1)〇
ページ内の薬剤一覧
鎮暈薬 | ||||
分類 | 成分名 | 作用 | ||
抗めまい成分 | ジフェニドール塩酸塩 | 前庭神経の調節 | ||
抗ヒスタミン | ジメンヒドリナート | 嘔吐中枢への刺激抑制 前庭の自律神経反射抑制 |
||
メクリジン塩酸塩 | ||||
プロメタジン塩酸塩 | ||||
クロルフェニラミンマレイン酸塩 | ||||
ジフェンヒドラミンサリチル酸塩 | ||||
抗コリン | スコポラミン臭化水素酸塩水和物 | 自律神経系の混乱を軽減 | ||
鎮静剤 | ブロモバレリル尿素 | 鎮静 | ||
アリルイソプロピルアセチル尿素 | ||||
キサンチン系 | カフェイン | 脳の興奮によるめまい軽減 | ||
ジプロフィリン | ||||
局所麻酔成分 | アミノ安息香酸エチル | めまいの吐き気軽減 | ||
ビタミン類 | ピリドキシン塩酸塩 | 吐き気防止 | ||
ニコチン酸アミド | ||||
リボフラビン | ||||
小児の疳 | ||||
分類 | 成分名 | 作用 | ||
生薬成分 | ゴオウ | 強心、緊張や興奮を鎮める 血液の循環を促す |
||
ジャコウ | ||||
レイヨウカク | 緊張や興奮を鎮める | |||
ジンコウ | 鎮静、健胃、強壮 | |||
漢方 | 抑肝散 ㋕ | イライラ、夜泣き | ||
抑肝散加陳皮半夏 ㋕ | 消化器が弱い人にも幅広く用いることができる。イライラ、夜泣き | |||
柴胡加竜骨牡蛎湯 ㋟ | 高血圧の随伴症状 夜泣き、便秘 |
|||
桂枝加竜骨牡蛎湯 ㋕ | 夜泣き、夜尿症 | |||
小建中湯 ㋕ | 小児虚弱体質、 夜尿症、夜泣き |