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3章:主な医薬品とその作用

第3章-3日目:Ⅰ-③: 睡眠に関する医薬品

眠気に関する医薬品

登録販売者試験の解説とポイントを過去問題にフォーカスして記載していきます。

厚生労働省の試験問題作成の手引きを基に分かり易い内容に変えて解説しています。

過去問題から作成したポイントテストもありますので、是非解いて見てくださいね。

独学で学ばれている方も含め問題なく解けることが実感できるかと思います。

今回は第3章のⅠ-③睡眠に関する医薬品から続きをしていきます。睡眠に関する問題は毎年2問は出題されています。

また第3章全体のポイントについては、第3章-1日目:Ⅰ-①:かぜ薬をご覧ください。

 

3 眠気を促す薬 

不眠とは, 催眠鎮静薬とは

ストレスなどにより自律神経系のバランスが崩れ、寝つきが悪いといった精神神経症状を生じることがあります。

それに伴った疲労倦怠感、寝不足感、頭重などの身体症状を伴う場合もあります。

不眠や不安の症状はうつ病に起因して生じる場合があり、うつ病患者はときに自殺行動を起こすこともあります。 

催眠鎮静薬は、睡眠を促したり、精神のたかぶりを鎮めたりします。

1)代表的な配合成分等、主な副作用

(a) 抗ヒスタミン成分

ヒスタミンとは?

生体内情報伝達物質であるヒスタミンは、脳の下部にある睡眠・覚醒に関与する部位で神経細胞の刺激を介して、覚醒の維持や調節を行う働きを担っています。

脳内におけるヒスタミン刺激が低下すると、眠気を促します。

  • ジフェンヒドラミン塩酸塩

抗ヒスタミン成分の中でも特に中枢作用が強い成分です。 抗ヒスタミン成分を主薬とする催眠鎮静薬は、睡眠改善薬として一時的な睡眠障害の緩和に用いられるものであり、慢性的に不眠症状を対象とするものではありません。 

【服用時の注意点】
  • 妊娠中の睡眠障害:ホルモンのバランスや体型の変化等が原因であり、睡眠改善薬の適用対象ではない。
  • 小児及び若年者:抗ヒスタミン成分により眠気とは反対の神経過敏中枢興奮などが現れることがあり、特に15歳未満の小児で起きやすいため、抗ヒスタミン成分を含有する睡眠改善薬の使用は避ける必要がある。
  • 服用後は、自動車の運転など、危険を伴う機械の操作に従事させてはならない。
  • 翌日まで眠気やだるさを感じる場合がある。 

 

(b)鎮静成分

  • ブロモバレリル尿素
  • アリルイソプロピルアセチル尿素 

脳の興奮を抑え、痛覚を鈍くする作用があり、 少量でも眠気を催しやすいです。

【服用時の注意点】
  • 服用後は、乗物や危険を伴う機械類の運転操作は避ける必要がある。 
  • 反復摂取による依存性があり、目的から逸脱した使用(乱用)がなされることがある。 
    (ブロモバレリル尿素の大量摂取による自殺が問題視されたことがある。)
  • ブロモバレリル尿素は胎児に障害を引き起こす可能性があり、妊娠していると思われる女性は使用を避ける。 

(c) 生薬成分

  • チョウトウコウ
  • サンソウニン
  • カノコソウ
  • チャボトケイソウ
  • ホップ

神経の興奮・緊張緩和を期待して次の生薬が使用されます。

生薬成分のみからなる鎮静薬でも、複数の鎮静薬の併用や、長期連用は避けるべきです。 

① チョウトウコウ

アカネ科のカギカズラ、Uncaria sinensis HavilandまたはUncaria macrophylla Wallichの通例とげを基原とする生薬 

 

② サンソウニン

クロウメモドキ科のサネブトナツメの種子を基原とする生薬 

 

③ カノコソウ

オミナエシ科のカノコソウの根及び根茎を基原とする生薬 

 

④ チャボトケイソウ

南米原産のトケイソウ科の植物で、その開花期における茎及び葉が薬用部位となる生薬 

 

⑤ ホップ

ヨーロッパ南部から西アジアを原産とするアサ科のホップの成熟した球果状の果穂が薬用部位となる生薬 

 

漢方処方製剤 

神経質、精神不安、不眠等の症状改善を目的とした漢方処方製剤

  • 酸棗仁湯さんそうにんとう
  • 加味帰脾湯かみきひとう
  • 抑肝散よっかんさん ※
  • 抑肝散加陳皮半夏よっかんさんかちんぴはんげ
  • 柴胡加竜骨牡蛎湯さいこかりゅうこつぼれいとう
  • 桂枝加竜骨牡蛎湯けいしかりゅうこつぼれいとう

体質の改善を主眼としているため、比較的長期間(1ヶ月位)服用されることが多いです。

※については、小児のかんや夜泣きにも用いられます。

カンゾウ,マオウ,ダイオウを含む場合
それぞれ㋕,㋮,㋟で記載

(a) 酸棗仁湯さんそうにんとう

体力中等度以下で、心身が疲れ、精神不安、不眠などがあるものの不眠症神経症に適す。

1週間位服用して症状の改善がみられない場合には、漫然と服用を継続せず、医療機関を受診するなどの対応が必要である。 

 

(b) 加味帰脾湯かみきひとう

体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪く、ときに熱感を伴うものの貧血、不眠症、精神不安、神経症に適す。

 

(c) 抑肝散よっかんさん抑肝散加陳皮半夏よっかんさんかちんぴはんげ

抑肝散:㋕

体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症(神経過敏)、歯ぎしり、更年期障害、血の道症に適すとされる。心不全を引き起こす可能性があるため、動くと息が苦しい、疲れやすい場合は医師の診療を受けるべきである。 

抑肝散加陳皮半夏:㋕

体力中等度をめやすとしてやや消化器が弱く、神経がたかぶり、イライラなどの神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症(神経過敏)、更年期障害、血の道症、歯ぎしりに適す。 

 

(d) 柴胡加竜骨牡蛎湯さいこかりゅうこつぼれいとう

体力中等度以上で、精神不安があって、動悸 、不眠、便秘などを伴う高血圧の随伴症状(動悸 、不安、不眠)、神経症、更年期神経症、小児夜なき便秘に適す。

構成生薬としてダイオウを含むため、便秘に適する。

重篤な副作用として、まれに肝機能障害、間質性肺炎を生じることが知られています。

 

(e) 桂枝加竜骨牡蛎湯けいしかりゅうこつぼれいとう

体力中等度以下で、疲れやすく、神経過敏で、興奮しやすいものの神経質、不眠症、小児夜なき夜尿症、眼精疲労、神経症に適す。 

 

 

 

ポイントテスト1

下記問題を正誤で答えよ(回答は下)

(1)生体内情報伝達物質であるヒスタミンは、脳の下部にある睡眠・覚醒に関与する部位で神経細胞の刺激を介して、覚醒の維持や調節を行う働きを担っている。

(2)小児及び若年者では、抗ヒスタミン成分により眠気とは反対の神経過敏や中枢興奮などが現れることがある。 

(3)ジフェンヒドラミン塩酸塩を主薬とする睡眠改善薬は、妊娠中にしばしば生じる睡眠障害も適用対象である。

(4)抗ヒスタミン成分を含有する睡眠改善薬の服用後は、目が覚めたあとも、注意力の低下や寝ぼけ様症状、めまい、倦怠感等を起こすことがある。

(5)ブロモバレリル尿素は胎児に障害を引き起こす可能性があるため、妊婦又は妊娠していると思われる女性は使用を避けるべきである。 

 

 

回答と解説
ポイントテスト1
(1)〇
(2)〇
(3)×:妊娠中に生じる睡眠障害には適用外。
(4)〇:いわゆる持ち越し作用
(5)〇

 

ポイントテスト2

下記問題を正誤で答えよ(回答は下)

(1)生薬成分のみからなる鎮静薬は、長期連用をしても問題ない。 

(2)酸棗仁湯は、体力中等度以下で、心身が疲れ、精神不安、不眠などがあるものの不眠症、神経症に適すとされるが、胃腸が弱い人、下痢又は下痢傾向のある人では、消化器系の副作用が現れやすい等、不向きとされる。 

(3)柴胡加竜骨牡蛎湯は、体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪く、ときに熱感を伴うものの貧血、不眠症、精神不安、神経症に適すとされる。 

(4)体力中等度以上で精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年期神経症、小児夜なき、便秘に適する漢方処方製剤として麻黄湯がある。

(5)抑肝散は体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症(神経過敏)、歯ぎしり、更年期障害、血の道症に適すとされる。

 

 

回答と解説
ポイントテスト2
(1)×:長期連用は避けるべき。
(2)〇
(3)×:柴胡加竜骨牡蛎湯ではなく、加味帰脾湯。
(4)×:麻黄湯ではなく、柴胡加竜骨牡蛎湯。
(5)〇

 

 

2)相互作用、受診勧奨等 

【相互作用】

ジフェンヒドラミン塩酸塩、ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素は、ほかの医薬品にも配合されており、併用により効き目や副作用が増強されるおそれがあります。

寝つきが悪いときのアルコール摂取(いわゆる「寝酒」)は催眠鎮静薬の薬効や副作用が増強されるおそれがあるため、服用時には飲酒を避ける必要があります。

なお、生薬成分のみや漢方処方製剤の場合は、飲酒を避けることとはなっていませんが、睡眠の質の低下や、薬効を妨げることがあります。

カノコソウ、サンソウニン、チャボトケイソウ、ホップ等を含む製品は、食品(ハーブなど)として流通可能であり、それら食品を併せて摂取すると、医薬品の薬効が増減したり、副作用のリスクが高まったりします。 

 

【受診勧奨等】

催眠鎮静薬は基本的に、一時的な不眠や寝つきが悪い場合に使用されるものです。

不眠が慢性的に続いている場合は、うつ病などの精神神経疾患や、何らかの身体疾患に起因する不眠が考えられるため、医療機関を受診させるなどの対応が必要です。 

なお、ブロモバレリル尿素などの鎮静成分の大量摂取により、昏睡や呼吸抑制が起きているようであれば直ちに、救命救急が可能な医療機関への受診が必要です。

また、ブロモバレリル尿素等の反復摂取による薬物依存は、自己の努力だけでは依存からの離脱は困難であるため、医療機関での診療が必要です。

 

ポイントテスト3

下記問題を正誤で答えよ(回答は下)

(1)飲酒とともにブロモバレリル尿素を含む医薬品を服用すると、 その薬効や副作用が増強されるおそれがあるため、服用時には飲酒を避ける必要がある。

(2)抗ヒスタミン成分を主薬とする催眠鎮静薬は、睡眠改善薬として一時的な睡眠障害の緩和に用いられるだけでなく、慢性的な不眠症状がある人も対象としている。

 

 

回答と解説
ポイントテスト3
(1)〇
(2)×:慢性的な不眠症ではなく、一時的な睡眠障害を対象としている。

 

4 眠気を防ぐ薬 

睡眠は健康維持に欠かせないものですが、眠気や倦怠感を除去する目的で、カフェインを主成分とする眠気防止薬が使用されることがあります。

1)カフェインの働き、主な副作用

カフェインは、脳に軽い興奮状態を引き起こし、一時的眠気倦怠感抑える効果があります。
脳が過剰に興奮すると、副作用として振戦(震え)、めまい、不安、不眠、頭痛などを生じることがあります。 

カフェインの眠気防止以外の作用

  • 腎臓におけるナトリウムイオン(同時に水分)の再吸収抑制による尿量の増加(利尿
  • 胃液分泌亢進による胃腸障害(食欲不振、悪心・嘔吐)
  • 心筋を興奮による動悸
  • 反復摂取による依存の形成
コーヒーを飲んだ時の反応と同じです。

またカフェインは、血液-胎盤関門の通過し、胎児へ到達すること、乳汁中へ移行することが知られています。そのため妊娠期間中、授乳期間中はカフェインの総摂取量が継続して多くならないよう留意する必要があります。 

乳児は肝臓が未発達なため、カフェインの代謝にはより多くの時間を要します。

 

ポイントテスト4

カフェインに関して、下記問題を正誤で答えよ(回答は下)

(1) 脳に軽い興奮状態を引き起こし、一時的に眠気や倦怠感を抑える効果がある。 

(2)作用は弱いながら、反復摂取により依存を形成する。 

(3)腎臓におけるナトリウムイオン(同時に水分)の再吸収促進作用があり、尿量の減少をもたらす。

(4)胃液分泌亢進作用があり、その結果、副作用として胃腸障害(食欲不振、悪心・嘔吐)が現れることがある。

(5)カフェインの血中濃度が最高血中濃度の半分に低減するのに要する時間は、通常の成人と比べ、乳児では非常に長い。 

 

 

回答と解説
ポイントテスト4
(1)〇
(2)〇
(3)×:再吸収抑制により尿量増加。
(4)〇
(5)〇

 

2)相互作用、休養の勧奨等 

【相互作用】

眠気防止薬におけるカフェインの1回摂取量はカフェインとして200mg1日摂取量はカフェインとして500mg が上限とされています。

カフェインは、ほかの医薬品や食品にも含まれているため、同時に摂取すると過量となり、中枢神経系や循環器系への作用が強く出る場合があります。

なお、かぜ薬やアレルギー用薬などの作用による眠気を抑えるために眠気防止薬を使用するのは適切ではありません。

 

【休養の勧奨等】

眠気防止薬は、一時的に精神的な集中を必要とするときに使用されるものであり、疲労を解消したり睡眠が不要になるものではありません。

特に細菌やウイルスなどに感染したときに生じる眠気や、副作用による眠気への使用は適切ではなく、十分な睡眠が必要です。

 

成長ホルモンの分泌を促す脳ホルモンはある種の睡眠物質と同時に分泌され、睡眠が促されることが知られています。

すなわち、定期的な睡眠によって、生体は正常な状態に維持され、成長することができます。

そのため、15歳未満の小児に眠気防止薬が使用されることがないよう注意が必要です。

 

ポイントテスト5

カフェインに関して、下記問題を正誤で答えよ(回答は下)

(1) 眠気防止薬におけるカフェインの1回摂取量は、カフェインとして500mg、1日摂取量は 1,200mgが上限とされている。 

(2) 成長期の小児の発育には睡眠が重要であることから、小児用の眠気防止薬はない。 

(3)カフェインを過量に摂取すると、中枢神経系や循環器系への作用が強く現れるおそれがある。

 

回答と解説
ポイントテスト5
(1)×:1回量200㎎、1日量500㎎が上限です。
(2)〇
(3)〇

ページ内の薬剤一覧

眠気を促す薬
分類 成分名 作用
抗ヒスタミン ジフェンヒドラミン塩酸塩 催眠鎮静
鎮静剤 ブロモバレリル尿素、 鎮静
アリルイソプロピルアセチル尿素
生薬成分 チョウトウコウ 神経の興奮・緊張緩和
鎮静
サンソウニン
カノコソウ
チャボトケイソウ
ホップ
漢方 酸棗仁湯さんそうにんとう ㋕ 不眠
加味帰脾湯かみきひとう ㋕ 血色が悪く、熱感を伴う不眠
抑肝散よっかんさん  ㋕ イライラ、夜泣き
抑肝散加陳皮半夏よっかんさんかちんぴはんげ ㋕ 消化器が弱く、イライラ、夜泣き
柴胡加竜骨牡蛎湯さいこかりゅうこつぼれいとう ㋟ 高血圧の随伴症状
夜泣き、便秘
桂枝加竜骨牡蛎湯けいしかりゅうこつぼれいとう ㋕ 夜泣き、夜尿症
眠気を防ぐ薬
分類 成分名 作用
カフェイン類 カフェイン 眠気、倦怠感の抑え

今回は眠気に関する医薬品についてでした。まずは読み流す形で結構です。大枠を掴んでいきましょう。お疲れさまでした。

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