登録販売者試験の解説とポイントを過去問題にフォーカスして記載していきます。
厚生労働省の試験問題作成の手引きを基に分かり易い内容に変えて解説しています。
過去問題から作成したポイントテストもありますので、
是非解いて見てくださいね。
独学で学ばれている方も含め問題なく解けることが実感できるかと思います。
また第3章全体のポイントについては、第3章-1日目:Ⅰ-①:かぜ薬をご覧ください。
Ⅹ 皮膚に用いる薬
1)外皮用薬とは
外皮用薬は、皮膚表面に生じた創傷など、または皮膚の下にある毛根、血管、筋組織、関節などの症状を改善・緩和のため、外用局所に直接適用されます。
外皮用薬を使用する際には、患部を清浄にしたり、入浴後に表皮の角質層を柔らかくしてから使用すると効果的です。
【剤形による取扱い上の注意】
① 塗り薬(軟膏剤、クリーム剤)
容器内への雑菌混入防止のため、必要量を手の甲などに取ってから患部に塗布することが望ましいとされています。
手に付着した薬剤は、目や口などの粘膜に触れて刺激感などの原因となるため洗い流す。
② 貼付剤(テープ剤、パップ剤)
汗や汚れを拭き取ってから使用することで、有効成分の浸透性低下や、剥がれやすさを防止できます。
同じ部位に連続して貼付すると、かぶれなどを生じやすくなります。
③ スプレー剤、エアゾール剤
強い刺激を防ぐため、目の周囲や粘膜への使用は避け、それ以外の部位でも凍傷を避けるため、患部から十分離して噴霧し、連続して噴霧する時間は3秒以内とすることが望ましいです。
使用時に振盪が必要な製品では、容器を振ってから噴霧してください。
めまいや吐きけを防止するため、できるだけ吸入しないよう、また周囲の人にも注意して使用することが大切です。
ポイントテスト1
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)スプレー剤は、強い刺激を生じるおそれがあるため、目の周囲や粘膜(口唇等)への使用は避けることとされている。
(2)軟膏剤は、薬剤を容器から直接指に取り、患部に塗布したあと、また指に取ることを繰り返すと、容器内に雑菌が混入するおそれがあるため、いったん手の甲などに必要量を取ってから患部に塗布することが望ましい。
(3)貼付剤(テープ剤、パップ剤)は、患部やその周囲に汗や汚れが付着した状態で貼付すると有効成分の浸透性が低下するほか、剥がれやすくもなるため十分な効果が得られない。
(4)エアゾール剤は、至近距離から同じ部位に5秒以上連続して噴霧することが望ましい。
(5)外皮用薬を使用する際には、表皮の角質層が柔らかくなることで有効成分が浸透しやすくなることから、入浴前に用いるのが効果的とされる。
回答と解説
ポイントテスト1
(1)〇
(2)〇
(3)〇
(4)×:凍傷を防ぐため十分離して、同じ場所への噴霧は3秒以内にする。
(5)×:入浴前ではなく、入浴後。
2)きず口などの殺菌消毒成分
殺菌消毒薬は、きり傷、擦り傷、掻き傷などの創傷面の化膿防止や、手指・皮膚の消毒を目的として使用されます。
殺菌消毒薬のうち、一定基準内のものは医薬部外品として製造販売が認められています。
火傷や化膿した創傷面の消毒、口腔内の殺菌・消毒などを併せて目的とする製品については、医薬品としてのみ認められています。
(a) アクリノール
黄色の色素で、一般細菌類の一部(連鎖球菌、黄色ブドウ球菌などの化膿菌)に殺菌消毒作用を示しますが、真菌、結核菌、ウイルスに対しては効果がありません。
比較的刺激性が低く、創傷患部がしみにくいですが、衣類等に付着すると黄色く着色し、脱色しにくくなります。
(b) オキシドール(過酸化水素水)
一般細菌類の一部に殺菌消毒作用を示します。
オキシドールの作用は、過酸化水素の分解に伴って発生する活性酸素による酸化、酸素の泡立ちによる洗浄効果であり、作用持続性は乏しく、組織への浸透性も低いです。
刺激性があるため、目の周りへの使用は避ける必要があります。
(c) ヨウ素系殺菌消毒成分
- ポビドンヨード
- ヨードチンキ
ヨウ素の酸化作用により、結核菌を含む一般細菌類、真菌類、ウイルスに対して殺菌消毒作用を示します。
ヨウ素の殺菌力はアルカリ性になると低下するため、石けんを使用する場合はよく洗い落としてから使用するべきです。
外用薬として用いた場合でも、まれにショックのような全身性の重篤な副作用を生じることがあります。
またヨウ素に対しアレルギーがある人では、使用を避ける必要があります。
① ポビドンヨード
ヨウ素をポリビニルピロリドン(PVP)と呼ばれる担体に結合させて水溶性にしたもので、徐々にヨウ素が遊離して殺菌作用を示します。
含嗽用よりも高濃度なため、誤って原液を口腔粘膜に適用しないよう注意が必要です。
② ヨードチンキ
ヨウ素及びヨウ化カリウムをエタノールに溶解させたもので、皮膚刺激性が強く、粘膜や目の周りへの使用は避ける必要があります。
また、化膿している部位では、症状を悪化させるおそれがあります。
(d) 陽性界面活性成分
- ベンザルコニウム塩化物
- ベンゼトニウム塩化物
- セチルピリジニウム塩化物
- セトリミド
結核菌やウイルスには効果がありません。
石けんとの混合で殺菌消毒効果が低下するので、石けん使用後は石けんを十分に洗い流す必要があります。
(e) クロルヘキシジングルコン酸塩、クロルヘキシジン塩酸塩
一般細菌類、真菌類に対して広い殺菌消毒作用を示すが、結核菌やウイルスに対する効果はありません。
(f) エタノール(消毒用エタノール)
一般細菌、真菌、結核菌、ウイルスに効果があります。
手指・皮膚の消毒、器具類の消毒のほか、創傷面の殺菌・消毒にも用いられることがあります。
皮膚刺激性が強いため、患部表面を軽く拭く程度に留め、また、粘膜や目の周りへの使用は避ける必要があります。
(g) その他
- イソプロピルメチルフェノール
- チモール
- フェノール(液状フェノール)
- レゾルシン
細菌や真菌類のタンパク質を変性させ、殺菌消毒作用を示し、患部の化膿を防ぐことを目的として用いられます。
レゾルシンについては、角質層を軟化させ、にきび用薬やみずむし用薬などに配合されている場合があります。
ページ内薬剤一覧
外皮用薬(殺菌消毒成分) | ||||||
分類 | 成分名 | 適用範囲 | 備考 | |||
一般細菌 | 結核菌 | 真菌 | ウイルス | |||
アクリノール | 〇(一部) | × | × | × | 刺激性が低く、黄色に着色 | |
オキシドール (過酸化水素水) |
〇(一部) | - | - | - | 刺激性あり、持続性なし、浸透性なし | |
ヨウ素系 | ポビドンヨード | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | アルカリ性になると(石鹸併用等)効果低下 ヨウ素系はショックを起こす場合あり |
ヨードチンキ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
陽性界面活性成分 | ベンザルコニウム塩化物 | 〇 | × | 〇(一部) | × | 石鹸との混合によって殺菌消毒効果が低下 |
ベンゼトニウム塩化物 | 〇 | × | 〇(一部) | × | ||
セチルピリジニウム塩化物 | 〇 | × | 〇(一部) | × | ||
セトリミド | 〇 | × | 〇(一部) | × | ||
クロルヘキシジングルコン酸塩 | 〇 | × | 〇 | × | ||
クロルヘキシジン塩酸塩 | 〇 | × | 〇 | × | ||
エタノール | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 皮膚刺激性が強いため、軽く拭く程度に留める。 | |
その他 | イソプロピルメチルフェノール | 細菌や真菌類のタンパク質を変性させ、殺菌消毒作用を示し、患部の化膿を防ぐ レゾルシンについては、角質層を軟化させ、にきび用薬やみずむし用薬などに配合 |
||||
チモール | ||||||
フェノール(液状フェノール) | ||||||
レゾルシン |
ポイントテスト2
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)ヨードチンキは、ヨウ素及びヨウ化カリウムをエタノールに溶解させたもので、皮膚刺激性が弱く、粘膜や目の周りの消毒に用いることができる。
(2)ベンザルコニウム塩化物は、陽性界面活性成分であり、石鹸との混合によって殺菌消毒効果が低下する。
(3)クロルヘキシジングルコン酸塩は、一般細菌類、真菌類に対して比較的広い殺菌消毒作用を示す。
(4)オキシドールは、作用の持続性や組織への浸透性が高い。
(5)アクリノールは、徐々にヨウ素が遊離して殺菌作用を示すように工夫されたものである。
回答と解説
ポイントテスト2
(1)×:皮膚刺激性が強く、粘膜、目の周りは避ける。
(2)〇
(3)〇
(4)×:持続性、組織浸透性が低い。
(5)×:アクリノールではなく、ポビドンヨード。
3)創傷への対応と受診勧奨
【一般的な創傷への対応】
出血している場合
創傷部に清潔なハンカチ等を当てて圧迫し、止血します(5分間程度は圧迫を続ける)。
創傷部を心臓より高くして圧迫すると、止血効果が上がります。
火傷(熱傷)の場合
できるだけ早く、水道水などで熱傷部を冷やすことが重要です。
軽度の熱傷であれば、痛みを感じなくなるまで(15~30分間)冷やします。
その後水膨れを破らないようガーゼなどで軽く覆うとよいとされています。
創傷面が汚れている場合
水道水などきれいな水でよく洗い流し、汚れた手で直接触れないようにします。
汚れが残ったまま、創傷表面を乾燥させるタイプの医薬品を使用すると、内部で雑菌が増殖して化膿することがあります。
創傷部に殺菌消毒薬を繰り返し適用すると、皮膚常在菌が殺菌されてしまい、また殺菌消毒成分により組織修復が妨げられ、治癒しにくくなることがあります。
【受診勧奨】
出血が著しい場合、患部が広範囲な場合、ひどい火傷の場合には、状態が悪化するおそれがあります。
特に低温火傷は、表面上は軽症に見えても、組織の損傷が深部に達している場合があり、医師の診療などの対応が必要です。
また、殺菌消毒成分はすべての細菌やウイルスに対して効果があるわけでなく、5~6日経過して症状が悪化している場合は受診するなどの対応が必要です。
ポイントテスト3
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1) 創傷部に殺菌消毒薬を繰り返し適用すると、皮膚常在菌が殺菌されてしまい、また、殺菌消毒成分により組織修復が妨げられて、かえって治癒しにくくなったり、状態を悪化させることがある。
(2)水洗が不十分で創傷面の内部に汚れが残ったまま、創傷表面を乾燥させるタイプの医薬品を使用すると、内部で雑菌が増殖して化膿することがある。
(3)火傷(熱傷)は、できるだけ早く、水道水などで熱傷部を冷やすことが重要であり、冷やした後は、水疱(水ぶくれ)を破ってから、ガーゼ等で覆うとよいとされている。
(4)出血しているときは、創傷部に清潔なガーゼやハンカチ等を当てて圧迫し、止血する。このとき、創傷部を心臓よりも低くして圧迫すると、止血効果が高い。
回答と解説
ポイントテスト3
(1)〇
(2)〇
(3)×:水膨れを破かないよう、ガーゼ等で覆うとよい。
(4)×:低くではなく、高くする。