登録販売者試験の解説とポイントを過去問題にフォーカスして記載していきます。
厚生労働省の試験問題作成の手引きを基に分かり易い内容に変えて解説しています。
過去問題から作成したポイントテストもありますので、
是非解いて見てくださいね。
独学で学ばれている方も含め問題なく解けることが実感できるかと思います。
今回は第3章のⅩ-③ 皮膚の抗菌、抗真菌、発毛 から続きをしていきます。
毎年1~2問は出題されていますので、確実に取りにいきましょう。
また第3章全体のポイントについては、第3章-1日目:Ⅰ-①:かぜ薬をご覧ください。
Ⅹ-③ 皮膚に用いる薬
1)抗菌作用を有する配合成分
(a) にきび、吹き出物等の要因と基礎的なケア
にきび、吹き出物は、化膿性皮膚疾患(細菌が感染して化膿する皮膚疾患)です。
発生要因
- ストレス、生活習慣の乱れによって肌の新陳代謝機能が低下し、毛穴の皮脂や古い角質が溜まる。
- 老廃物がつまった毛穴の中で皮膚常在菌であるにきび桿菌(アクネ菌)が繁殖する。
- にきび桿菌が皮脂を分解して生じる遊離脂肪酸によって毛包周囲に炎症を生じ、さらにほかの細菌の感染を誘発して膿疱や膿腫ができる。
洗顔などにより皮膚を清浄に保つことが基本とされます。
ストレスを取り除き、規則正しい生活習慣を心がけることが大切です。
また化粧品は油分の多いものより、水性成分主体のものを選択することが望ましいです。
にきび桿菌でなく黄色ブドウ球菌などの化膿菌が毛穴で増殖して生じた吹き出物を毛嚢炎(疔)といい、にきびに比べて痛みや腫れが強くでます。毛嚢炎が顔面に生じたものを面疔といいます。
(b) 代表的な抗菌成分
① サルファ剤
- スルファジアジン
- ホモスルファミン
- スルフイソキサゾール
細菌のDNA合成を阻害することで抗菌作用を示します。
② バシトラシン
細菌の細胞壁合成を阻害することにより抗菌作用を示します。
③ フラジオマイシン硫酸塩、クロラムフェニコール
細菌のタンパク質合成を阻害することにより抗菌作用を示します。
(c) 主な副作用、受診勧奨
広範囲で、湿潤やただれがひどい場合には、医療機関を受診するなどの対応が必要です。
通常は、元々備わっている免疫機能の働きによって、化膿菌は自然に排除されます。
5~6日間使用して症状の改善がみられない場合には、使用を中止して医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
ポイントテスト1
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)ホモスルファミンは、細菌の細胞壁合成を阻害することにより抗菌作用を示す。
(2) クロラムフェニコールは、細菌のタンパク質合成を阻害することにより抗菌作用を示す。
(3) バシトラシンは、皮膚の角質層を構成するケラチンを変質させることにより、角質軟化作用を示す。
回答と解説
ポイントテスト1
(1)×:細胞壁合成阻害ではなく、DNA合成阻害。
(2)〇
(3)×:角質軟化作用ではなく、細菌の細胞壁合成阻害。
2)抗真菌作用を有する配合成分
(a) みずむし・たむしなどの要因と基礎的なケア
みずむし、たむしなどは、皮膚糸状菌という真菌類の一種の寄生によって起こる疾患(表在性真菌感染症)です。
スリッパやタオルなどを介してほかの保菌者やペットから感染することが多いです。
皮膚糸状菌の種類と症状
- みずむし:手足の白癬
主に足に生じるが、まれに手に生じることもあります。
病型により、趾間型、小水疱型、角質増殖型に分類されます。
趾間型は指の間の鱗屑(皮が剥ける)、浸軟(ふやけて白くなる)、亀裂、ただれを主症状とするものです。
- ぜにたむし:体部白癬
輪状の小さな丸い病巣が胴や四肢に発生し、発赤と鱗屑、痒みを伴います。
- いんきんたむし:頑癬
ぜにたむしと同様の病巣が内股にでき、尻や陰嚢付近に広がります。
- その他:爪に発生する白癬 (爪白癬)や、頭部に発生する白癬(しらくも)
頭部白癬は小児に多く、清浄に保てば自然治癒することが多いです。
爪白癬は、爪内部に薬剤が浸透しにくいため難治性です。
【みずむしに対する基礎的なケア】
清潔に保ち、通気性を良くしておくことが重要です。
【剤形の選択】
一般的に、じゅくじゅくと湿潤している患部には、軟膏が適します。
液剤は有効成分の浸透性が高いですが患部への刺激が強いため、厚く角質化している部分には液剤が適します。
湿疹とみずむしなどの初期症状は類似していることが多く、湿疹に抗真菌作用を有する成分を使用すると、湿疹の悪化を招くことがあります。
ポイントテスト2
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)湿疹か皮膚糸状菌による皮膚感染かはっきりしない場合、抗真菌成分が配合された医薬品を使用することが望ましい。
(2)一般的に、じゅくじゅくと湿潤している患部には、軟膏が適すとされる。
回答と解説
ポイントテスト2
(1)×:湿疹をかえって悪化させる場合があるため、抗真菌成分の使用は避ける。
(2)〇
(b) 代表的な抗真菌成分、主な副作用
膣、陰嚢、外陰部や、湿疹、湿潤、ただれ、亀裂や外傷のひどい患部、化膿している患部には使用を避ける必要があります。
① イミダゾール系抗真菌成分
- オキシコナゾール硝酸塩
- ネチコナゾール塩酸塩
- ビホナゾール
- スルコナゾール硝酸塩
- エコナゾール硝酸塩
- クロトリマゾール
- ミコナゾール硝酸塩
- チオコナゾール
イミダゾール系=アゾールが付く薬品と覚えましょう。
皮膚糸状菌の細胞膜を構成する成分の産生を妨げたり、細胞膜の透過性を変化させることにより、増殖を抑えます。
副作用としてかぶれ、腫れ、刺激感等が現れることがあります。
② アモロルフィン塩酸塩、ブテナフィン塩酸塩、テルビナフィン塩酸塩
皮膚糸状菌の細胞膜を構成する成分の産生を妨げ、増殖を抑えます。
③ シクロピロクスオラミン
皮膚糸状菌の細胞膜に作用して、増殖・生存に必要な物質の輸送機能を妨げ、増殖を抑えます。
④ ウンデシレン酸、ウンデシレン酸亜鉛
患部を酸性にすることで、皮膚糸状菌の発育を抑えます。
⑤ ピロールニトリン
菌の呼吸や代謝を妨げることにより、皮膚糸状菌の増殖を抑えます。
抗真菌作用は弱いため、ほかの抗真菌成分と組み合わせて配合されます。
⑥ その他
- トルナフタート
- エキサラミド
- モクキンピ(生薬)
モクキンピ:アオイ科のムクゲの幹皮を基原とする生薬
いずれも皮膚糸状菌の増殖を抑えます。
【受診勧奨】
ぜにたむしやいんきんたむしで患部が広範囲に及ぶ場合は、内服抗真菌薬による全身的な治療が必要な場合もあるので、医療機関の受診が必要です。
ポイントテスト3
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)ピロールニトリンは、患部を酸性にすることにより、皮膚糸状菌の発育を抑える。
(2)クロトリマゾールは、皮膚糸状菌の細胞膜を構成する成分の産生を妨げたり、細胞膜の透過性を変化させることにより、その増殖を抑える。
(3)テルビナフィン塩酸塩は、皮膚糸状菌の細胞膜を構成する成分の産生を妨げることにより、その増殖を抑える。
(4)ウンデシレン酸は、菌の呼吸や代謝を妨げることにより、皮膚糸状菌の増殖を抑える。
(5) ぜにたむしやいんきんたむしで患部が広範囲に及ぶ場合は、自己治療の範囲を超えており、内服抗真菌薬による全身的な治療が必要な場合もあるので、医療機関を受診するなどの対応が必要である。
回答と解説
ポイントテスト3
(1)×:ピロールニトリンではなく、ウンデシレン酸。
(2)〇
(3)〇
(4)×:ウンデシレン酸ではなく、ピロールニトリン。
(5)〇
3)頭皮・毛根に作用する配合成分
毛髪用薬は、脱毛の防止、育毛、ふけや痒みを抑えることを目的として、頭皮に適用する医薬品です。
毛髪用薬は、医薬部外品(育毛剤、養毛剤)として製造販売されているものもありますが、「壮年性脱毛症」などの疾患名を掲げた効能・効果は、医薬品においてのみ認められます。
(a) カルプロニウム塩化物
末梢組織においてアセチルコリンに類似した作用(コリン作用)を示し、頭皮の血管を拡張、血行促進による発毛効果があります。
アセチルコリンと異なりコリンエステラーゼによる分解を受けにくく、作用が持続します。
副作用としてコリン作用による局所又は全身性の発汗、寒気、震え、吐きけが挙げられます。
(b) エストラジオール安息香酸エステル
女性ホルモン成分の一種
脱毛は男性ホルモンに起因しており、女性ホルモンによる脱毛抑制効果を期待して配合されます。
頭皮からの吸収され循環血液中に入る可能性を考慮し、妊娠中の女性では使用を避けるべきです。
(c) 生薬成分
- カシュウ
- チクセツニンジン
- ヒノキチオール
① カシュウ
タデ科のツルドクダミの塊根を基原とする生薬で、頭皮における脂質代謝を高めて、余分な皮脂を取り除く作用がある。
② チクセツニンジン
ウコギ科のトチバニンジンの根茎を、通例、湯通ししたものを基原とする生薬で、血行促進、抗炎症などの作用がある。
③ ヒノキチオール
ヒノキ科のタイワンヒノキ、ヒバ等から得られた精油成分で、抗菌、抗炎症などの作用がある。
ポイントテスト4
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)カルプロニウム塩化物は、末梢組織(適用局所)において、交感神経系を刺激し、頭皮の血管を拡張、毛根への血行を促すことによる発毛効果を期待して用いられる。
(2)脱毛抑制効果を期待して、女性ホルモン成分の一種であるエストラジオ ール安息香酸エステルが配合されていることがある。
(3)チクセツニンジンは、頭皮における脂質代謝を高めて、余分な皮脂を取り除く作用を期待して用いられる。
(4)カシュウは、抗菌、抗炎症などの作用を期待して用いられる。
回答と解説
ポイントテスト4
(1)×:交感神経系ではなく、コリン作用を示す。
(2)〇
(3)×:チクセツニンジンではなく、カシュウ。
(4)×:カシュウではなく、ヒノキチオール。
ページ内の薬剤一覧
皮膚に用いる抗菌成分 | ||||
分類 | 成分名 | 作用 | ||
サルファ剤 | スルファジアジン | 細菌のDNA合成を阻害する | ||
ホモスルファミン | ||||
スルフイソキサゾール | ||||
その他 | バシトラシン | 細菌の細胞壁合成を阻害する | ||
フラジオマイシン硫酸塩 | 細菌のタンパク質合成を阻害する | |||
クロラムフェニコール | ||||
皮膚に用いる抗真菌成分 | ||||
イミダゾール系抗真菌成分 | オキシコナゾール硝酸塩 | 皮膚糸状菌の細胞膜を構成する成分の産生を妨げたり、細胞膜の透過性を変化させることにより、増殖を抑える。 | ||
ネチコナゾール塩酸塩 | ||||
ビホナゾール | ||||
スルコナゾール硝酸塩 | ||||
エコナゾール硝酸塩 | ||||
クロトリマゾール | ||||
ミコナゾール硝酸塩 | ||||
チオコナゾール | ||||
アモロルフィン塩酸塩 | 皮膚糸状菌の細胞膜を構成する成分の産生を妨げ、増殖を抑える。 | |||
ブテナフィン塩酸塩 | ||||
テルビナフィン塩酸塩 | ||||
シクロピロクスオラミン | 増殖・生存に必要な物質の 輸送機能を妨げ、増殖を抑える。 |
|||
ウンデシレン酸 | 患部を酸性にすることで、皮膚糸状菌の発育を抑える。 | |||
ウンデシレン酸亜鉛 | ||||
ピロールニトリン | 菌の呼吸や代謝を妨げ、 増殖を抑える |
|||
その他 | トルナフタート | 皮膚糸状菌の増殖を抑える。 | ||
エキサラミド | ||||
モクキンピ(生薬) | ||||
頭皮・毛根に作用する配合成分 | ||||
コリン作用成分 | カルプロニウム塩化物 | 副交感神経刺激し、 頭皮の血管を拡張、血行促進による発毛効果がある。 |
||
女性ホルモン | エストラジオール安息香酸エステル | 女性ホルモンによる脱毛抑制効果を期待して配合されている。 | ||
生薬成分 | カシュウ | 脂質代謝を高めて、 余分な皮脂を取り除く |
||
チクセツニンジン | 血行促進、抗炎症 | |||
ヒノキチオール | 抗菌、血行促進、抗炎症 |