登録販売者試験の解説とポイントを過去問題にフォーカスして記載していきます。
また厚生労働省の試験問題作成の手引きを基に分かり易い内容に変えて解説しています。
実際の過去問題から作成したポイントテストもありますので、
是非解いて見てくださいね。
独学で学ばれている方も含め問題なく解けることが実感できるかと思います。
第2章全体のポイントについては、第2章-1日目:Ⅰ-①:消化器系をご覧ください。
(所要時間 14分)
2 目、鼻、耳などの感覚器官
目、鼻、耳などの感覚器官は、外界における種々の現象を刺激として、脳に伝えるための器官です。人の感覚にはいわゆる五感があり、それぞれ独自の機能を有しています。
1)目
目は視覚情報の受容器官で、眼球と、眼瞼、結膜、涙器、眼筋等からなります。顔面の左右に1対あり、明暗、色、遠近感の認識ができます。
(a) 眼球
頭蓋骨のくぼみ(眼窩)に収まっている球形の器官です。
(wikipedia:Rhcastilhos (translated by Hatsukari715). And Jmarchn改)
- 角膜 :表面が透明な膜(黒目の部分)
- 強膜 :乳白色の丈夫な結合組織(白目の部分)
- 虹彩 :瞳孔を散大・縮小させて眼球内に入る光の量を調節
- 水晶体:厚みが変わることで遠近の焦点を調節。水晶体は周りを囲んでいる毛様体の収縮・弛緩により、近くの物を見るときには丸く厚みが増し、遠くの物を見るときには扁平になる。
- 房水(組織液):角膜と水晶体の間の液体。眼内に一定の圧(眼圧)を生じさせているほか、透明な角膜や水晶体には血管が通っておらず房水により栄養分や酸素を供給
- 硝子体:水晶体から網膜の間の透明なゼリー状組織
- 網膜 :光と色を識別する2種類の視細胞が集まる膜。光を受容する細胞はビタミンAが不可欠で、不足すると夜盲症が生じる。また視細胞が受容した光の情報は、神経細胞を介して神経線維に伝えられる。網膜の神経線維は束になり視神経となる。
角膜は紫外線を含む光に長時間曝されると、角膜の上皮に損傷を生じることがあります(雪眼炎(雪目))
(b) 眼瞼、結膜、涙器、眼筋
眼瞼(まぶた)
眼球の前面を覆う薄い皮膚のひだです。
- 物理的に目を防護
- 光の量を低減
- まばたきによって目の表面を涙液で潤して清浄に保つ
眼瞼は、皮下組織が少なく薄いため、内出血や裂傷、全身的な体調不良が現れやすいです。
睫毛(まつげ)
異物の混入を防ぐとともに、物が触れると反射的に目を閉じる触毛としての機能があります。
結膜
眼瞼の裏側と強膜とを結ぶように覆って組織を保護しています。薄い透明な膜であるため、中を通っている血管が観察できます。
目の充血は血管が拡張して赤く見える状態で、2種類に分けられます。
結膜の充血:白目の部分だけでなく眼瞼の裏側も赤くなる。
強膜の充血:白目の部分だけピンク色になる。
涙器
涙液を分泌する涙腺と、涙液を鼻腔に導出する涙道からなります。涙腺は上眼瞼の裏側にある分泌腺で、血漿から涙液を産生します。
涙液の主な働き
- 異物を洗い流す
- 角膜に酸素や栄養分を供給する(房水も同じ役割)
- 角膜や結膜で生じた老廃物を洗い流す
- 角膜表面を滑らかに保つ
- リゾチーム、免疫グロブリンなどを含み、感染から防御する
涙液は起きている間は絶えず分泌されています。
眼筋
眼球を上下左右斜めの各方向に向けるため、6本の眼筋が眼球側面の強膜につながっています。
眼精疲労とは、生理的な目の疲れではなく、メガネやコンタクトレンズが合わない場合や、神経性の疲労、睡眠不足、栄養不良等が要因となって、慢性的な目の疲れに肩こり、頭痛等の全身症状を伴う場合をいいます。
ポイントテスト1
下記問題を正誤で答えよ(回答は下。)
(1)結膜には光を受容する視細胞が密集していて、視細胞が受容した光の情報は神経細胞を介して神経線維に伝えられる。
(2)ビタミンAが不足すると夜間視力の低下(夜盲症)を生じることがある。
(3)透明な角膜や水晶体には血管が通っておらず、房水によって栄養分や酸素が供給される。
(4)水晶体は、周りを囲んでいる毛様体の収縮・弛緩によって、遠くの物を見るときには丸く厚みが増し、近くの物を見るときには扁平になる。
(5)涙腺は上眼瞼の裏側にある分泌腺で、リンパ液から涙液を産生する。
回答と解説
ポイントテスト1
(1)×:結膜ではなく網膜。
(2)○
(3)○
(4)×:近くの物を見るときには丸く厚みが増し、遠くの物を見るときには扁平になる。
(5)×:リンパ液ではなく血漿。
2)鼻
鼻は嗅覚情報の受容器官です。空気中を漂う物質を鼻腔内に吸い込み、その化学的刺激を感じとります。食品からの嗅覚情報は、舌が受容した味覚情報と脳において統合され、風味として認識されます。
(a) 鼻腔
においの元の分子が鼻腔上部の粘膜にある特殊な神経細胞(嗅細胞)を刺激すると、その刺激が脳の嗅覚中枢へ伝わります。
嗅覚は鋭敏で記憶にも残りやすいですが、同時に順応を起こしやすく、同じにおいを嗅いでいるとそのにおいを感じなくなります。
鼻腔は、薄い板状の軟骨と骨でできた鼻中隔によって左右に仕切られています。
鼻中隔の前部は、毛細血管が分布し、粘膜が薄いため、鼻出血を起こしやすいです。鼻腔の粘膜に炎症を起こして腫れた状態を鼻炎といい、鼻汁過多や鼻閉(鼻づまり)などの症状を生じます。
(b) 副鼻腔
鼻腔に隣接した目と目の間、額部分、頬の下、鼻腔の奥に空洞があり、それらを総称して副鼻腔といい、鼻腔と細い管でつながっています。
副鼻腔も、鼻腔と同様、線毛を有し粘液を分泌する粘膜で覆われています。
副鼻腔に入った埃等の粒子は、粘液に捉えられて線毛の働きによって鼻腔内へ排出されますが、鼻腔と連絡する管は非常に狭いため、鼻腔粘膜が腫れると副鼻腔の開口部がふさがり、副鼻腔に炎症を生じることがあります。
ポイントテスト2
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)鼻は、空気中を漂う物質を鼻腔内に吸い込み、その化学的刺激を感じとる。
(2)鼻腔の粘膜に炎症を起こして腫れた状態を鼻炎といい、鼻汁過多や鼻閉(鼻づまり)などの症状を生じる。
(3)鼻腔に隣接した目と目の間、額部分、頬の下、鼻腔の奥に空洞があり、総称して副鼻腔といい、いずれも鼻腔と細い管でつながっている。
(4)鼻中隔の前部は、毛細血管が豊富に分布していることに加えて粘膜が薄いため、傷つきやすく鼻出血を起こしやすい。
(5)副鼻腔は、線毛がなく粘液を分泌する細胞でできた粘膜で覆われていない。
回答と解説
ポイントテスト2
(1)○
(2)○
(3)○
(4)○
(5)×:繊毛を有し粘膜で覆われている。
3)耳
聴覚情報と平衡感覚を感知する器官で、外耳、中耳、内耳からなります。側頭部の左右両側に1対あり、音の立体感を認識することができます。
(a) 外耳
耳介と外耳道からなります。
耳介 :軟骨組織が皮膚に覆われ、外耳道の軟骨部を連なっており、音を集める。
外耳道:軟骨部には耳毛が生え、埃の侵入を防ぐ。
外耳道にある耳垢腺(汗腺の一種)や皮脂腺からの分泌物に、埃や老廃物などが混じって耳垢(耳あか)となります。
(b) 中耳
外耳と内耳をつなぐ部分で、鼓膜、鼓室、耳小骨、耳管からなります。
音は、鼓膜を振動させ、鼓室内部の3つの耳小骨が鼓膜の振動を増幅し、内耳へ伝導します。 鼓室は、耳管により鼻腔や咽頭と通じています。耳管は鼓膜内外の気圧の均衡を保つのに役立っています。
小さな子供では、耳管が太く短くて、走行が水平に近いため、鼻腔からウイルスや細菌が侵入し感染が起こりやすいです。
(c) 内耳
聴覚器官である蝸牛と、平衡器官である前庭の2つの部分からなり、どちらもリンパ液で満たされています。
蝸牛:渦巻き形をした器官で、耳小骨から伝わる振動がリンパ液を震わせ、聴細胞の感覚毛を揺らすことで、聴神経が刺激される。
前庭:水平・垂直方向の加速度を感知する部分(耳石器官)と、体の回転や傾きを感知する部分(半規管)に分けられる。リンパ液の動きで平衡感覚として感知する。
乗物酔い(動揺病)は、反復される加速度刺激や動揺によって、平衡感覚が混乱して生じる身体の変調です。
ポイントテスト3
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)耳垢は、内耳にある耳垢腺や皮脂腺からの分泌物に、埃や内耳上皮の老廃物などが混じったものである。
(2)耳は、聴覚情報と平衡感覚を感知する器官で、外耳、中耳、内耳からなる。
(3)蝸牛の内部は、リンパ液で満たされているが、前庭の内部は、空洞である。
(4)小さな子供では、耳管が太く短くて、走行が水平に近いため、鼻腔からウイルスや細菌が侵入し感染が起こりやすい。
(5) 外耳は、聴覚器官である蝸牛と、平衡器官である前庭からなる。
回答と解説
ポイントテスト3
(1)×:内耳ではなく外耳。
(2)○
(3)×:どちらもリンパ液で満たされている。
(4)○
(5)×:外耳ではなく内耳。