登録販売者試験の解説とポイントを過去問題にフォーカスして記載していきます。
また厚生労働省の試験問題作成の手引きを基に分かり易い内容に変えて解説しています。
実際の過去問題から作成したポイントテストもありますので、
是非解いて見てくださいね。
独学で学ばれている方も含め問題なく解けることが実感できるかと思います。
また第2章全体のポイントについては、第2章-1日目:Ⅰ-①:消化器系をご覧ください。
Ⅱ 薬の働く仕組み
医薬品の作用は、全身作用と局所作用の2種類に大別できます。
- 全身作用:薬の有効成分が消化管などから吸収されて循環血液中に移行し、全身を巡って効果をもたらす作用。
内服の場合、消化管からの吸収・代謝と作用部位への分布という過程を経るため、ある程度の時間が必要である - 局所作用:薬の有効成分が特定の狭い身体部位で効果をもたらす作用。
使用した部位に作用する場合が多く、比較的速やかに作用する。
局所作用を目的とする医薬品で全身性の副作用が生じたり、全身作用を目的とする医薬品で局所的な副作用を生じることがあります。
内服薬
全身作用を示すものが多くありますが、膨潤性下剤や生菌製剤等のように、有効成分が消化管内で局所作用を示す医薬品もあります。
逆に胃腸に作用する薬であっても、有効成分が循環血液中に入ってから薬効を示す場合、全身作用の一部となります。
膨潤性下剤:腸管内で水分を吸収し膨張することで排便を促す医薬品
生菌製剤:生きたビフィズス菌などで、消化管内の細菌のバランスを改善することにより整腸作用を得る医薬品
外用薬
局所作用を示すものが多くあります。また、坐剤、経皮吸収製剤等では、適用部位から吸収され、全身作用を示す場合もあります。
経皮吸収製剤:皮膚から直接吸収させることで効果を得る医薬品
1)薬の生体内運命
薬が体内でどのような挙動を示し、どのように体内から消失していくのかといった薬物動態について、吸収と代謝・排泄の2つに分けて説明します。
a) 有効成分の吸収
- 消化管吸収
- 内服以外の粘膜吸収
- 皮膚吸収
① 消化管吸収
内服薬のほとんどは、有効成分が消化管から吸収されて循環血液中に移行し、全身作用を現します。
錠剤、カプセル剤等の固形剤の場合、消化管内で崩壊し胃で有効成分が溶出するものが多いです。
その他、腸で溶ける腸溶性製剤や有効成分がゆっくりと溶出する徐放性製剤もあります。
有効成分は主に小腸で吸収されます。
一般に消化管からの吸収は、濃度の高い方から低い方へ受動的に拡散していく現象です。
有効成分の吸収量や吸収速度は、消化管内容物や他の医薬品によって影響を受けます。また、有効成分によっては消化管の粘膜に障害を起こす場合もあります。全身作用を目的としない内服薬中には消化管内を通過する間に結果的に吸収されてしまうものがあり、循環血液中に移行した有効成分によって、好ましくない作用を生じることがあります。
② 内服以外の用法における粘膜からの吸収
内服以外の用法で使用する薬は、適用部位から有効成分を吸収させ、全身作用を発揮させることを目的とするものがあります。
直腸粘膜や口腔・鼻腔粘膜からの吸収は小腸での吸収と異なり、初めに肝臓で代謝を受けることなく全身に分布します。医薬品によっては、粘膜に刺激等の局所的な副作用を生じることがあります。また急激な吸収による全身性の副作用を回避するため、粘膜に障害があるときは使用を避けるべきです。
直腸粘膜からの吸収
坐剤は肛門から挿入することで、直腸内で溶解させ、直腸粘膜から有効成分が吸収されます。直腸の粘膜下には静脈が豊富に分布しており、有効成分が容易に循環血液中に入るため、内服の場合よりも全身作用が速やかに現れます。
口腔粘膜からの吸収
抗狭心症薬のニトログリセリン(舌下錠、スプレー)や禁煙補助薬のニコチン(咀嚼剤)は有効成分が口腔粘膜から吸収されて全身作用を現します。
鼻腔粘膜からの吸収
鼻腔の粘膜に医薬品を適用する場合、一般用医薬品には全身作用を目的とした点鼻薬はなく、いずれの医薬品も局所作用を目的としています。しかし、鼻腔粘膜の下には毛細血管が豊富なため、点鼻薬の成分は循環血液中に移行しやすく、全身性の副作用を生じることがあります。
眼粘膜からの吸収
眼の粘膜に適用する点眼薬は、鼻涙管を通って鼻粘膜から吸収され副作用を起こすことがあるため、場合によっては点眼する際には目頭の鼻涙管の部分を押さえ、有効成分が鼻に流れるのを防ぐ必要があります。
咽頭粘膜からの吸収
咽頭の粘膜に適用する含嗽薬(うがい薬)等の場合は、唾液や粘液によって食道へ流れてしまうため、咽頭粘膜からの吸収が原因で全身的な副作用が起こることは少ないです。ただし、アレルギー反応は微量の抗原でも生じるため、点眼薬や含嗽薬等でもショック(アナフィラキシー)等のアレルギー性副作用を生じることがあります。
③ 皮膚吸収
皮膚に適用する医薬品(塗り薬、貼り薬等)は、適用部位に対する局所的な効果を目的とするものがほとんどです。殺菌消毒薬等のように、有効成分が皮膚表面で作用するものもありますが、有効成分が皮膚から浸透して体内の組織で作用する医薬品の場合は、浸透する量は皮膚の状態、傷の有無やその程度などによって影響を受けます。
通常は、皮膚表面から循環血液中へ移行する量は比較的少ないですが、粘膜吸収の場合と同様に、肝臓で代謝を受ける前に全身に分布するため、全身性の作用や副作用が現れることがあります。
ポイントテスト1
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1) 局所作用は、医薬品の適用部位が作用部位である場合が多いため、反応は全身作用と比較して速やかに現れる。
(2) 内服薬は、全身作用を示すものが多いが、膨潤性下剤のように、有効成分が消化管内で作用するものもあり、その場合に現れる作用は局所作用である。
(3)外用薬は、適用部位に対する局所的な効果を目的としたもので、全身作用を目的としたものはない。
(4) 一般に、消化管からの吸収は、消化管が積極的に医薬品成分を取り込む現象である。
(5)有効成分が皮膚から浸透して体内の組織で作用する医薬品の場合は、浸透する量は皮膚の状態、傷の有無やその程度などによって影響を受ける。
回答と解説
ポイントテスト1
(1)○
(2)○
(3)×:坐剤や経皮吸収製剤は適用部位から吸収され全身作用を示す。
(4)×:積極的ではなく、濃度の高い方から低い方へ受動的に拡散していく現象。
(5)○
b) 薬の代謝、排泄
代謝:
物質が体内で化学的に変化することです。その結果、作用を失ったり(不活性化)、作用が現れたり(代謝的活性化)、体外へ排泄されやすい水溶性の物質に変化します。
排泄 :
尿などで体外へ排出されることであり、有効成分は未変化体のままや代謝物として、腎臓から尿中へ、肝臓から胆汁中へ、又は肺から呼気中へ、その他に汗中や母乳中などから排出されます。
母乳中への移行は、乳児に対する副作用の発現という点で、軽視できません。
① 消化管で吸収されてから循環血液中に入るまでの間に起こる代謝
消化管で吸収された有効成分は、消化管の毛細血管から血液中へ移行します。その血液は全身循環に入る前に門脈という血管を経由して肝臓を通過するため、有効成分は、まず肝臓の酵素の働きにより代謝を受けることになります。これを肝初回通過効果といいます。
肝機能が低下した人では医薬品を代謝する能力が低いため、効き目が過剰に現れたり、副作用を生じやすくなります。なお、薬物代謝酵素の遺伝子型には個人差があります。
消化管粘膜、腎臓にも代謝活性があることが明らかにされています。
② 循環血液中に移行した有効成分の代謝と排泄
循環血液中に移行した多くの有効成分は、主として肝細胞の薬物代謝酵素により代謝される。一方、有効成分は血液中で血漿タンパク質と速やかかつ可逆的に結合して複合体を形成します。複合体を形成した有効成分は、薬物代謝酵素の作用によって代謝されず、またトランスポーターによって輸送されることもありません。したがって、代謝や分布が制限されるため、血中濃度の低下は徐々に起きます。
循環血液中に存在する有効成分の多くは、腎臓から尿中に排泄されます。腎機能が低下すると尿中への排泄が遅れ、血中濃度が下がりにくく、医薬品の効き目が過剰に現れたり、副作用を生じやすくなったりします。また、血漿タンパク質との複合体は腎臓でろ過されないため、作用が持続する原因となります。
ポイントテスト2
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)医薬品の有効成分が代謝を受けると、作用を失ったり(不活性化)、作用が現れたり (代謝的活性化)、あるいは体外へ排泄されやすい脂溶性の物質に変化する。
(2)排泄とは、代謝によって生じた物質(代謝物)が尿等で体外へ排出されることであり、医薬品の有効成分は未変化体のままで、あるいは代謝物として、腎臓から尿中へ、肝臓から胆汁中へ、又は肺から呼気中へ排出される。
(3)肝機能が低下した人では、医薬品を代謝する能力が低いため、正常な人に比べて全身循環に到達する有効成分の量がより多くなり、効き目が過剰に現れたり、副作用を生じやすくなったりする。
(4) 医薬品の有効成分と血漿タンパク質との複合体は、腎臓で濾過されないため、有効成分が長く循環血液中に留まることになり、作用が持続する原因となる。
(5)循環血液中に移行した有効成分は、主として肥満細胞の薬物代謝酵素の働きによって代謝を受ける。
回答と解説
ポイントテスト2
(1)×:代謝により水溶性の物質に変化。
(2)○
(3)○
(4)○
(5)×:肝臓(肝細胞)の薬物代謝酵素により代謝。
2)薬の体内での働き
全身作用を示す医薬品の多くは、標的となる細胞に存在する受容体、酵素、トランスポーターなどのタンパク質と結合し、薬効や副作用を現します。
医薬品が効果を発揮するためには、有効成分がその作用部位で一定以上の濃度で分布する必要があります。
医薬品を使用すると
①吸収し、血中濃度が上昇
②最小有効濃度(閾値)を超えると薬効が発現
③血中濃度はある時点でピーク(最高血中濃度)に達し、その後は低下
※代謝・排泄の速度が吸収・分布の速度を上回るため
④血中濃度が最小有効濃度を下回ると、薬効は消失
大量摂取や間隔をあけずに追加摂取し血中濃度を高くしても、ある濃度以上になるとより強い薬効は得られなくなり、有害な作用(副作用や毒性)が現れやすくなります。
全身作用を目的とする医薬品の多くは、最小有効濃度と、毒性が現れる濃度域(危険域、中毒域ともいう)の間の範囲(有効域、治療域ともいう)に維持されるよう、使用量及び使用間隔が定められています。
ポイントテスト3
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)循環血液中に移行した有効成分は、血流によって全身の組織・器官へ運ばれて作用するが、多くの場合、標的となる細胞に存在する受容体、酵素、トランスポーターなどのタンパク質と結合し、その機能を変化させることで薬効や副作用を現す。
(2)医薬品が摂取され、その有効成分が循環血液中に移行すれば、その血中濃度に関わらず生体の反応としての薬効が現れる。
(3)一度に大量の医薬品を摂取したり、十分な間隔をあけずに追加摂取したりして血中濃度を高くしても、ある濃度以上になるとより強い薬効は得られなくなる。
(4)有効成分の血中濃度は、ある時点でピーク(最高血中濃度)に達し、その後は低下していくが、これは代謝・排泄の速度が吸収・分布の速度を上回るためである。
(5)薬効よりも毒性が強く現れる有効成分の血中濃度域を無効域という。
回答と解説
ポイントテスト3
(1)○
(2)×:最小有効濃度を超えたとき薬効が発現。
(3)○
(4)○
(5)×:無効域ではなく、中毒域。
3)剤形ごとの違い、適切な使用方法
全身作用のための剤形の例
錠剤(内服)、口腔用錠剤、カプセル剤、散剤・顆粒剤、経口液剤・シロップ剤など
局所作用のための剤形の例
軟膏剤、クリーム剤、外用液剤、貼付剤、スプレー剤など
a) 錠剤(内服)
錠剤は、内服用医薬品の剤形として最も広く用いられます。
特徴
・飛散させずに服用できる
・苦味や刺激性を感じない
デメリット
・高齢者、乳幼児等の場合、飲み込みにくい
・適切な量の水(又はぬるま湯)とともに飲み込まなければならない
※適量の水と共に服用しないと錠剤が喉や食道に張り付き、喉や食道の粘膜を傷めるおそれがあります。
錠剤(内服)は、胃や腸で崩壊し、有効成分が溶出することが薬効発現の前提です。基本的に噛み砕いて服用してはなりません。
特に腸内で溶解する腸溶錠の場合などは、注意が必要です。
b) 口腔用錠剤
① 口腔内崩壊錠
口の中の唾液で速やかに溶けるため水なしで服用することができます。
② チュアブル錠
口の中で舐めたり噛み砕いたりして服用する剤形で、水なしでも服用できます。
③ トローチ、ドロップ
口腔内や喉で薬効を示すものが多く、飲み込まずに口の中で舐めて、徐々に溶かして使用します。
c) 散剤、顆粒剤
錠剤のように固形状にせず、粉末状にしたものを散剤、小さな粒状にしたものを顆粒剤という。
特徴
・粉末状の散剤、粒状の顆粒剤は錠剤よりも服用しやすい。
デメリット
・歯に挟まったり、苦味や渋味を感じることがある。
飛散を防ぐため、少量の水を口に含んだ上で服用したり、何回かに分けて服用するなどの工夫をするとよいです。顆粒剤は粒の表面がコーティングされているものもあるので、噛み砕かずに水などで飲み込みます。
d) 経口液剤、シロップ剤
経口液剤は、内服用の液状の剤形です。
特徴
・固形製剤より飲み込みやすく、服用後、比較的速やかに消化管から吸収される
デメリット
・経口液剤では苦味やにおいが強く感じられることがある
小児に用いる医薬品の場合、白糖等の糖類を混ぜたシロップ剤とすることが多くあります。
e) カプセル剤
カプセル剤は、カプセル内に散剤や顆粒剤、液剤等を充填した剤形です。
その特徴は錠剤とほぼ同様ですが、原材料として用いられているゼラチンはブタなどのタンパク質を主成分としているため、ゼラチンに対してアレルギーを持つ人は使用を避けるなどの注意が必要です。
f) 外用局所に適用する剤形
① 軟膏剤、クリーム剤
基剤の違いにより、軟膏剤とクリーム剤に大別され、有効成分が適用部位に留まりやすいのが特徴です。
・軟膏剤 :油性の基剤で皮膚への刺激が弱く、適用部位を水から遮断したい場合に用い、患部が乾燥していても、じゅくじゅく浸潤していても使用できる。
・クリーム剤:油性の基剤に水分を加えたもので、患部を水で洗い流したい場合に用いられるが、皮膚への刺激が強く、傷などへの使用は避ける必要がある。
② 外用液剤
外用の液状製剤で、患部が乾きやすいのが特徴です。適用部位に直接的な刺激感等を与える場合があります。
③ 貼付剤
テープ剤及びパップ剤があり、有効成分が一定時間留まるため、薬効の持続が期待できる反面、適用部位にかぶれが起こすことがあります。
④ スプレー剤
霧状にするなどして局所に吹き付ける剤形で、塗りにくい部位や、広範囲に適用する場合に適しています。
ポイントテスト4
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)有効成分を消化管から吸収させ、全身に分布させることにより薬効をもたらすための剤形としては、錠剤(内服)、カプセル剤、散剤・顆粒剤、経口液剤・シロップ剤等がある。
(2)有効成分を患部局所に直接適用する剤形としては、軟膏剤、クリーム剤、外用液剤、貼付剤、スプレー剤等がある。
(3) 口腔内崩壊錠は、薬効を期待する部位が口の中や喉である場合が多く、飲み込まずに口の中で舐めて徐々に溶かして使用する。
(4)クリーム剤は皮膚への刺激が弱く傷への使用ができる。
(5)顆粒剤は、粒の表面がコーティングされているものもあるので、噛み砕かずに水などで食道に流し込む。
回答と解説
ポイントテスト4
(1)○
(2)○
(3)×:口腔内崩壊錠ではなく、トローチ・ドロップ
(4)×:刺激が強く、傷への使用は避ける必要がある。
(5)○