登録販売者試験の解説とポイントを過去問題にフォーカスして記載していきます。
厚生労働省の試験問題作成の手引きを基に分かり易い内容に変えて解説しています。
実際の過去問題から作成したポイントテストもありますので、
是非解いて見てくださいね。
独学で学ばれている方も含め問題なく解けることが実感できるかと思います。
第2章全体のポイントについては、第2章-1日目:Ⅰ-①:消化器系をご覧ください。
3)循環器
循環器とは、体液(血液やリンパ液)を体内に循環させ、酸素、栄養分等を全身の組織へ送り、老廃物を排泄器官へ運ぶための器官系で、心臓、血管系、血液、脾臓、リンパ系からなります。
a) 心臓
心筋でできた握りこぶし大の袋状の臓器で、血液は心臓がポンプの役目を果たすことによって循環しています。
心臓の内部は上部左右の心房、下部左右の心室の4つの空洞に分かれています。
心房で血液を集めて心室に送り、心室から血液を拍出します。このような心臓の動きを拍動といいます。
心臓が収縮したときの血圧を最大血圧、拡張したときの血圧を最小血圧といいます。
心臓の右側部分(右心房、右心室)は、血液を肺へ送り出し、肺でのガス交換が行われた血液は、心臓の左側部分(左心房、左心室)に入り、そこから全身に送り出されます。
心室には血液を取り込む側と送り出す側に弁があり、血液の逆流を防ぎます。
(wikipedia:Wapcaplet and Yaddah (translated by Hatsukari715改)
b) 血管系
血管は動脈・静脈・毛細血管の3種類に大別されます。
血管は、心拍数と同様に自律神経系によって制御され、血管壁が収縮すると細くなり、弛緩すると拡張します。
動脈
- 心臓から血液が出ていく血管
- 心臓の圧に耐えられるよう弾力性がある
- 体の深部を通ることが多いが、頚部、手首、肘の内側等では脈が触れる
- 弁はない ※弁とは、血液が逆流しないように通路をさえぎるもの
血液(血漿)中の過剰なコレステロールが血管の内壁に蓄積すると、血液が流れにくくなり、また動脈ではその弾力性が損なわれます。
静脈
- 心臓に血液が戻る血管
- 血管壁は動脈より薄い
- 皮膚表面近くを通ることが多い
- 血液が逆流しないよう薄い帆状のひだ(静脈弁)がある
毛細血管
- 動脈と静脈を繋ぐ、細い血管
- 薄い血管壁を通し、酸素・栄養を組織に運び、二酸化炭素・老廃物を受け取る
- 弁はない
消化管壁を通っている毛細血管の大部分は、門脈と呼ばれる血管に集まって肝臓に入ります。消化管で吸収された物質は一度肝臓を通って代謝や解毒を受けた後、血流に乗って全身を循環する仕組みとなっています。
c) 血液
血液は、血漿と血球から構成されます。
血液の役割
- 酸素や栄養分、ホルモンを各組織へ運搬
- 二酸化炭素や老廃物を各組織から回収(その後、肺や腎臓へ運搬)
- 血液の循環によって、全身の温度が管理
① 血 漿
90%以上が水分からなり、アルブミン、グロブリンなどのタンパク質や、微量の脂質、糖質、電解質を含む。
アルブミン:血液の浸透圧の保持と、ホルモンや医薬品の成分等と複合体を形成して、代謝や排泄を受けにくくする。
グロブリン:体内に侵入した細菌やウイルス等の異物を特異的に認識する抗体としての役割を担い、免疫グロブリンとも呼ばれる。
脂質(中性脂肪、コレステロール等):血漿中のタンパク質と結合してリポタンパク質を形成し、血漿中に分散している。なお、血液の粘稠性は、主として血漿の水分量や赤血球の量で決まり、血中脂質量はほとんど影響を与えない。
② 血球(赤血球、白血球、血小板)
赤血球:酸素を運ぶ
中央部がくぼんだ円盤状の細胞で、血液全体の約40%を占め、ヘモグロビンを含みます。 ヘモグロビンは鉄分と結合したタンパク質で、肺で取り込まれた酸素を、全身の組織へ供給します。
赤血球やヘモグロビン量が少ない場合や、鉄やビタミン不足、また出血により血液が酸素を供給できないと、疲労や血色不良などの貧血症状が現れます。
白血球: 異物から身を守る
体内に侵入した細菌やウイルス等の異物に対する防御を受け持つ細胞です。数種類に分類されます。
ⅰ) 好中球:
白血球の約60%を占め、血管壁を通り抜けて組織の中に入り込むことができ、細菌やウイルス等を食作用によって取り込んで分解します。
ⅱ) リンパ球:
白血球の約33%を占め、血液のほかリンパ液にも分布しています。細菌、ウイルス等の異物を認識したり(T細胞リンパ球)、それらに対する抗体(免疫グロブリン)を産生します(B細胞リンパ球)。
ⅲ) 単球:
白血球の約5%を占め、最も大きく強い食作用を持ちます。血管壁を通り抜けて組織の中に入り込むことができ、組織の中ではマクロファージ(貪食細胞)と呼ばれます。
ⅳ) これらのほか、アレルギーに関与する白血球もあります。
血小板: かさぶたを作る
血管が損傷し血液が流出すると、血管壁が収縮し出血を防ぎます。また損傷部位に血小板が粘着、凝集して傷口を覆います。このとき血小板から放出される酵素によって血液を凝固させる一連の反応が起こり、血漿タンパク質の一種であるフィブリノゲンが傷口で重合し線維状のフィブリンとなります。フィブリン線維に赤血球や血小板などが絡まり合い、血の凝固物となって傷口をふさぎ止血します。
d) 脾臓
脾臓は古い赤血球を壊し、また異物の免疫応答に関与します。
胃の後方の左上腹部に位置し、古くなって柔軟性が失われた赤血球は脾臓に存在するマクロファージ(貪食細胞)によって壊されます。
また、脾臓にはリンパ球が増殖、密集する組織(リンパ組織)があり、血流中の細菌やウイルス等の異物に対する免疫応答に関与します。
e) リンパ系(リンパ液、リンパ管、リンパ節)
リンパ液が循環するリンパ系は、血管系とは半ば独立した循環系として存在します。血管系は心臓を中心とする閉鎖循環系であるのに対し、リンパ系は末端が組織の中に開いている開放循環系です。
また心臓のようにポンプの働きをする器官がなく、リンパ液の流れは主に骨格筋の収縮によるものであり、流速は血流に比べて緩やかです。
リンパ管には弁があって、リンパ液は一定の方向に流れています。
組織中に侵入した細菌、ウイルス等の異物はリンパ管に取り込まれます。リンパ管の途中にリンパ節と呼ばれる結節があり、内部にはリンパ球やマクロファージ(貪食細胞)が密集し、リンパ液で運ばれてきた細菌やウイルス等を排除します。リンパ管は最終的に鎖骨の下にある静脈につながります。
ポイントテスト1
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)肺でのガス交換が行われた血液は、心臓の左心房、左心室に入り、そこから全身に送り出される。
(2)動脈は弾力性があり圧力がかかっても耐えられるようになっている。この動脈は多くが体の皮膚表面近くを通っている。
(3)血液の粘稠性は、主として血漿の水分量や血中脂質量で決まり、赤血球の量はほとんど影響を与えない。
(4)血漿タンパク質の一種であるフィブリンが傷口で重合して線維状のフィブリノゲンとなる。
(5)脾臓には、リンパ球が増殖、密集する組織があり、血流中の細菌やウイルス等の異物に対する免疫応答に関与する。
回答と解説
ポイントテスト1
(1)○
(2)×:動脈の多くが体の深部を通る。
(3)×:血中脂質量ではなく、赤血球の量。
(4)×:フィブリノゲンが重合してフィブリンになる。
(5)○