登録販売者試験の解説とポイントを過去問題にフォーカスして記載していきます。
厚生労働省の試験問題作成の手引きを基に分かり易い内容に変えて解説しています。
実際の過去問題から作成したポイントテストもありますので、
是非解いて見てくださいね。
独学で学ばれている方も含め問題なく解けることが実感できるかと思います。
第2章:人体の働きと医薬品
問題概要:
試験問題の配点として、2章で20問あります。1章と比較し、びっくりするくらい内容が濃くなっています。今後3章以降を学ぶにあたっての知識の基盤になりますので、2章の底固めが大切です。
2章は「いかに頭の中にイメージできるか」がキーポイントになります。図での解説を丁寧にしていきますので、図を確認してイメージを膨らませてください。また第2章より小分けにして記載します。着実に学んでいきましょう。
(問題作成の手引きにて第2章のポイントが記載されていますので、覚える必要はありませんが、一読しておきましょう。)
問題作成のポイント
○ 身体の構造と働き、薬の働く仕組み、副作用の症状等に関する基本的な知識を、購入者への情報提供や相談対応に活用できること
(引用:試験問題の作成に関する手引き|厚生労働省)
1 胃・腸、肝臓、肺、心臓、腎臓などの内臓器官
その前に
ヒトの体は、細胞が集まって構成されています。
関連する働きを持つ細胞が集まって組織を作り、複数の組織が組み合わさって一定の形態を持ち、特定の働きをする器官が形成されます。
器官が互いに連絡して協働し、全体として一つの機能を持つ場合、それらを器官系といいます。
補足情報
次の消化器系の構造と働きを理解するために、栄養の基礎知識が役立ちます。暗記する必要はありませんので、読み流してください。
栄養とは:
メインとなる3大栄養素は炭水化物、タンパク質、脂質です。そこに、ビタミンとミネラルが加わり5大栄養素といわれます。
- 炭水化物:消化してブドウ糖などの単糖類に変わる。デンプンも炭水化物の一種である。
- タンパク質:筋肉の基になり、消化してアミノ酸に変わる。
- 脂質:脂質は消化することで、より小さなモノグリセリドやグリセロールと脂肪酸に変わる。
1)消化器系とは
飲食物を消化して栄養分として吸収し、その残滓を体外に排出する器官系です。
大別すると、消化管と消化腺の2つに分けられます。
- 消化管:口腔、咽頭、食道、胃、小腸、大腸、肛門
※口腔から肛門まで、平均的な成人で全長約9m続く管 - 消化腺:唾液腺、肝臓、胆嚢、膵臓など
※消化液を分泌するための器官
飲食物はそのままの形で栄養分として利用できないため、消化管で吸収される形に分解(消化)する必要があります。
消化は次の2つに大別されます。
- 化学的消化:消化液に含まれる消化酵素の作用によって飲食物を分解。
- 機械的消化:口腔における咀嚼や、消化管の運動などによって消化管の内容物を細かくして消化液と混和し、化学的消化を容易にする。
(消化器系の全体図)
ポイントテスト1
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)消化管には、口腔 、咽頭、食道、胆嚢が含まれる。
(2)消化腺には、肝臓、膵臓が含まれる。
(3)化学的消化とは、消化液に含まれる消化酵素の作用によって飲食物を分解することをいう。
(4)消化器系とは、飲食物を消化して生命を維持していくため必要な栄養分として吸収し、その残滓を体外に排出する器官系である。
(5)消化管は、口腔から大腸まで続く管である。
回答と解説
ポイントテスト1
(1)×:胆嚢は消化腺。
(2)○
(3)○
(4)○
(5)×:口腔から肛門までを指す。
a) 口腔
① 歯
歯は、歯周組織によって上下の顎の骨に固定されています。歯槽骨の中に埋没している歯の部分を歯根、歯頚(歯肉線のあたり)を境に口腔に露出する部分を歯冠といいます。
歯冠の表面はエナメル質で覆われ、体で最も硬い部分となっています。エナメル質の下には象牙質と呼ばれる硬い骨状の組織があり、神経や血管が通る歯髄を取り囲んでいます。
歯の齲蝕(むし歯)が象牙質に達すると、神経が刺激されて、歯がしみたり痛みを感じるようになります。
② 舌
舌の表面には、舌乳頭という無数の小さな突起があり、味覚を感知する部位である味蕾 が分布しています。舌は味覚を感知するほか、飲食物を撹拌して唾液と混和させる働きがあります。
③ 唾液腺
唾液には、デンプンを、デキストリンや麦芽糖といった分解物に分解する消化酵素(プチアリン、唾液アミラーゼともいう)が含まれ、味覚の形成にも重要な役割を持ちます。
またリゾチームなどの殺菌・抗菌物質が含まれるほか、唾液によって口腔内は pHがほぼ中性に保たれ、酸による歯の齲蝕を防いでいます。
ポイントテスト2
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)口腔内は、唾液によってpHがほぼ中性に保たれ、酸による歯の齲蝕を防いでいる。
(2)唾液には、消化酵素の他にリゾチーム等の殺菌・抗菌物質が含まれている。
(3)歯槽骨の中に埋没している歯の部分を歯根、歯頚を境に口腔に露出する部分を歯冠という。
(4)歯冠の表面は象牙質で覆われ、体で最も硬い部分となっている。
(5)歯冠の象牙質の下には石灰質と呼ばれる硬い骨状の組織があり、神経や血管が通る歯髄を取り囲んでいる。
回答と解説
ポイントテスト2
(1)○
(2)○
(3)○
(4)×:象牙質ではなく、エナメル質。
(5)×:エナメル質の下には象牙質と呼ばれる硬い骨状の組織がある。
b) 咽頭・食道 ・胃
①咽頭
咽頭は口腔から食道に通じる食物路と、呼吸器の気道とが交わる部分です。
飲食物を飲み込む運動(嚥下)が起きるときには、喉頭の入り口にある弁(喉頭蓋)が反射的に閉じることで、飲食物が喉頭や気管に流入せずに食道へと送られます。
②食道
食道は直径1~2㎝の管状の器官で、上端と下端には括約筋があり、胃の内容物が食道や咽頭に逆流しないように防いでいます。飲食物は重力ではなく食道の運動によって胃に送られます。 胃液が食道に逆流すると、むねやけが起きます。
なお食道には消化液の分泌腺はありません。
③胃
胃は腐敗・発酵の防止と、タンパク質の消化を行います。
胃の内壁は粘膜で覆われて多くのひだを形成し、粘膜の表面には無数の微細な孔があり、胃腺につながっています。
分泌物:
- 胃腺から胃液(塩酸(胃酸)+ペプシノーゲン)を分泌
- 粘膜表皮から粘液を分泌
胃酸:
- ペプシノーゲンをペプシンにする。
- 胃内を強酸性に保って内容物の腐敗や発酵を防止する。
ペプシノーゲン:
- 胃酸によりペプシンとなり、タンパク質を消化する(タンパク質がペプシンにより半消化された状態をペプトンという)。
粘液:
- 胃液による消化作用から胃自体を保護する。
- 胃粘液に含まれる成分は、小腸におけるビタミンB12の吸収に重要な役割を果たす。
胃液分泌と粘液分泌のバランスが崩れると、胃液により胃の内壁が損傷を受けて胃痛等の症状を生じることがあります。
ポイントテスト3
下記問題の正誤を答えよ(回答は下)
(1)飲食物を飲み込む運動(嚥下)が起きるときには、喉頭の入り口にある弁(喉頭蓋)が反射的に閉じることにより、飲食物が喉頭や気管に流入せずに食道へと送られる。
(2)食道には、消化液の分泌腺がある。
(3)嚥下された飲食物は、重力によって胃に落ち込むのでなく、食道の運動によって胃に送られる。
(4)ペプシノーゲンは、胃酸によって炭水化物を消化するペプシンとなり、 胃酸とともに胃液として働く。
(5)胃の粘膜表皮を覆う細胞から粘液が分泌され胃自体を保護しているが、胃液分泌と粘液分泌のバランスが崩れると、胃液により胃の内壁が損傷を受けることがある。
回答と解説
ポイントテスト3
(1)○
(2)×:分泌腺はない。
(3)○
(4)×:炭水化物ではなくタンパク質。
(5)○
C) 小腸 ・膵臓
①小腸
小腸では内容物の消化と栄養分の吸収が行われます。
全長6~7mの管状の臓器で、十二指腸、空腸、回腸の3部分に分かれています。
十二指腸
十二指腸の彎曲部には膵臓からの膵管と胆嚢からの胆管の開口部があって、膵液と胆汁を腸管内へ送り込んでいます。
十二指腸の内壁からは腸液が分泌され、腸液の働きより膵液中のトリプシノーゲンがトリプシンになります。トリプシンは、胃で半消化されたタンパク質(ペプトン)をさらに細かく消化する酵素です。
空腸・回腸
小腸のうち十二指腸に続く部分の、おおむね上部40%が空腸、残り約60%が回腸ですが、明確な境はありません。
空腸で分泌される腸液(粘液)に、腸管粘膜上の消化酵素(半消化されたタンパク質をアミノ酸まで分解するエレプシン、炭水化物を単糖類(ブドウ糖、ガラクトース、果糖)まで分解するマルターゼ、ラクターゼなど)が加わり、消化液として働きます。
小腸の運動によって、内容物がそれらの消化液(膵液、胆汁、腸液)と混和されながら消化と栄養分の吸収が行われます。
また小腸は栄養吸収のため、内壁の表面積を大きくする構造を持ちます。十二指腸の上部を除く小腸の内壁には輪状のひだがあり、その粘膜表面は絨毛(柔突起ともいう)に覆われてビロード状になっています。 絨毛を構成する細胞の表面には、さらに微絨毛が密生して吸収効率を高めています。
炭水化物とタンパク質は、消化酵素の作用によってそれぞれ単糖類、アミノ酸に分解されて吸収されます。
脂質(トリグリセリド)は、消化酵素(リパーゼ)の作用によって分解を受けますが、小腸粘膜の上皮細胞で吸収されると脂質に再形成され、乳状脂粒(リポタンパク質の一種でカイロミクロンとも呼ばれる)となります。脂質の吸収の際には、脂溶性ビタミンも一緒に取り込まれます。
②膵臓
胃の後下部に位置する細長い臓器で、膵液を十二指腸へ分泌します。膵液は弱アルカリ性で、胃で酸性となった内容物を中和します。
膵臓は、炭水化物、タンパク質、脂質のそれぞれを消化するすべての酵素の供給を担っています。また、膵臓は、消化腺であるとともに、血糖値を調節するホルモン(インスリン及びグルカゴン)などを血液中に分泌する内分泌腺でもあります。
膵臓の分泌物
消化腺:膵液として、十二指腸へ分泌
- トリプシノーゲン:活性体のトリプシンに変換後タンパク質を消化
- 膵液アミラーゼ :デンプンの分解
- リパーゼ :脂質の分解
内分泌腺:血液中に分泌
- インスリン:血糖値を下げる
- グルカゴン:血糖値を上げる
ポイントテスト4
下記問題の正誤を答えよ(回答は下)
(1)小腸の運動によって内容物がそれらの消化液と混和されながら大腸へと送られ、その間に消化と栄養分の吸収が行われる。
(2)十二指腸の上部を除く小腸の内壁には輪状のひだがあり、その粘膜表面は絨毛に覆われてビロード状になっている。
(3)脂質は、消化酵素(リパーゼ)の作用によって分解を受けるが、小腸粘膜の上皮細胞で吸収されると脂質に再形成され、乳状脂粒(リポタンパク質の一種でカイロミクロンとも呼ばれる)となる。
(4)膵液は、デンプンを分解するリパーゼ、脂質を分解するアミラーゼなど、多くの消化酵素を含んでいる。
(5)膵臓は、消化腺であるとともに、血糖値を調節するホルモンであるトリプシノーゲンを血液中に分泌する内分泌腺である。
回答と解説
ポイントテスト4
(1)○
(2)○
(3)○
(4) ×:デンプンはアミラーゼ、脂質はリパーゼによりそれぞれ分解される。
(5)×:トリプシノーゲンではなく、インスリン・グルカゴン
d) 胆嚢 、肝臓
①胆嚢
胆嚢は、肝臓で産生された胆汁を濃縮して蓄える器官で、十二指腸に内容物が入ってくると収縮して腸管内に胆汁を送り込みます。
胆汁に含まれる胆汁酸塩(コール酸、デオキシコール酸等の塩類)は、脂質の消化を容易にし、また、脂溶性ビタミンの吸収を助けます。腸内に放出された胆汁酸塩の大部分は、小腸で再吸収されて肝臓に戻されます(腸肝循環)。 胆汁には、古くなった赤血球や過剰のコレステロール等を排出する役割もあります。
胆汁に含まれるビリルビン(胆汁色素)は、赤血球中のヘモグロビンが分解されて生じた老廃物で、腸管内に生息する常在細菌(腸内細菌)によって代謝されて、糞便を茶褐色にする色素となります。
②肝臓
横隔膜の直下に位置します。胆汁を産生するほかに、次のような働きがあります。
i) 栄養分の代謝・貯蔵
肝臓に運ばれたブドウ糖はグリコーゲンとして蓄えられます。グリコーゲンは、血糖値が下がったときなど、必要に応じてブドウ糖に分解されて血液中に放出されます。
皮下組織等に蓄えられた脂質も、一度肝臓に運ばれてからエネルギー源として利用可能な形に代謝されます。また、脂溶性ビタミンであるビタミンA、D等のほか、ビタミンB6やB12等の水溶性ビタミンの貯蔵臓器でもあります。
ii) 生体に有害な物質の無毒化・代謝
生体に有害な物質を、肝細胞内の酵素系の働きで代謝して無毒化し、または体外に排出されやすい形にします。医薬品として摂取された物質の多くも、肝臓において代謝されます。
- アルコールの場合、胃や小腸で吸収されますが、肝臓へと運ばれて一度アセトアルデヒドに代謝後、さらに代謝されて酢酸となる。
- アミノ酸が分解された場合等に生成するアンモニアは、有害な物質であるため肝臓において尿素へと代謝される。
- ヘモグロビンが分解して生じたビリルビンも肝臓で代謝されるが、肝機能障害や胆管閉塞などを起こすとビリルビンが循環血液中に滞留して、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる症状)を生じる。
iii) 生体物質の産生
生体物質とは生体の体内に存在する化学物質の総称であり、胆汁酸やホルモンなどの生合成の出発物質となるコレステロール、フィブリノゲン等の血液凝固因子、アルブミンなど、生命維持に必須な役割を果たす種々の生体物質は、肝臓において産生されます。また、肝臓では、必須アミノ酸以外のアミノ酸を生合成することができます。
ポイントテスト5
下記問題の正誤を答えよ(回答は下)
(1)小腸で吸収されたブドウ糖は、血液によって肝臓に運ばれてグリコーゲンとして蓄えられる。
(2)肝臓は、脂溶性ビタミンであるビタミンA、D等のほか、水溶性ビタミンであるビタミンB6やB12等の貯蔵臓器である。
(3)アルコールは、肝臓へと運ばれて一度酢酸に代謝されたのち、さらに代謝されてアセトアルデヒドとなる。
(4)肝臓では、必須アミノ酸以外のアミノ酸を生合成することができる。
(5)胆嚢は、膵臓で産生された胆汁を濃縮して蓄える器官で、十二指腸に内容物が入ってくると収縮して腸管内に胆汁を送り込む。
回答と解説
ポイントテスト5
(1)○
(2)○
(3)×:アルコール⇨アセトアルデヒド⇨酢酸
(4) ○:体内で作れないから必須アミノ酸という。
(5)×:膵臓ではなく、肝臓
炭水化物,タンパク質,脂質の消化吸収のまとめ
e) 大腸・肛門
①大腸
大腸は、盲腸、虫垂、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸からなる管状の臓器で、内壁粘膜に絨毛がない点で小腸と区別されます。
大腸ではかゆ状の内容物から水分とナトリウム、カリウム、リン酸等の電解質の吸収が行われ、固形状の糞便が形成されます。
大腸では消化はほとんど行われません。
大腸の粘膜から分泌される粘液(大腸液)は、便塊を粘膜上皮と分離しやすく滑らかにします。
通常、糞便の成分の大半は水分で、食物の残滓は約5%に過ぎません。
下行結腸、S状結腸に滞留している糞便が直腸へ送られてくると、その刺激に反応して便意が起こります。
腸内細菌と大腸の働きとの関係
大腸内には腸内細菌が多く存在し、腸管内の食物繊維を発酵分解します。大腸の粘膜上皮細胞は食物繊維が分解されて生じる栄養分を、その活動に利用しており、大腸が正常に働くには腸内細菌の存在が重要です。
また、大腸の腸内細菌は、血液凝固や骨へのカルシウム定着に必要なビタミンK等の物質も産生しています。なお、腸内細菌による発酵で、糞便の臭気の元となる物質やメタン、二酸化炭素等のガスが生成されます。
②肛門
肛門は腸粘膜が皮膚へと連なる体外への開口部です。直腸粘膜と皮膚の境目になる部分には歯状線と呼ばれるギザギザの線があります。
肛門周囲は肛門括約筋で囲まれており、排便を意識的に調節することができます。また肛門周囲は、静脈が細かい網目状に通っていて、肛門周囲の組織がうっ血すると痔の原因となります。
ポイントテスト6
下記問題の正誤を答えよ(回答は下)
(1)大腸の粘膜上皮細胞は、腸内細菌が食物繊維を分解して生じる栄養分を、その活動に利用しており、大腸が正常に働くには、腸内細菌の存在が重要である。
(2)大腸は、盲腸、虫垂、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸からなる管状の臓器で、 内壁粘膜には、小腸と同様に絨毛がある。
(3)通常、糞便中の食物の残滓は約50%を占める
(4)肛門周囲は、動脈が細かい網目状に通っていて、肛門周囲の組織がうっ血すると痔の原因となる。
回答と解説
ポイントテスト6
(1)○
(2)×:絨毛はない
(3)×:50%ではなく、約5%
(4)×:動脈ではなく、静脈