登録販売者試験の解説とポイントを過去問題にフォーカスして記載していきます。
厚生労働省の試験問題作成の手引きを基に分かり易い内容に変えて解説しています。
過去問題から作成したポイントテストもありますので、
是非解いて見てくださいね。
独学で学ばれている方も含め問題なく解けることが実感できるかと思います。
また第3章全体のポイントについては、第3章-1日目:Ⅰ-①:かぜ薬をご覧ください。
3 胃腸鎮痛鎮痙薬
1)代表的な鎮痙成分、症状を抑える仕組み、主な副作用
(a) 抗コリン成分
急な胃腸の痛みは、主として胃腸の過剰な動き(痙攣)によって生じます。
副交感神経系の刺激によって、消化管の運動、胃液分泌が亢進(=度合いが高まる)するため、副交感神経の伝達物質であるアセチルコリンと受容体の反応を妨げる(抗コリン作用)ことで、胃痛、腹痛を鎮めることができます。
- メチルベナクチジウム臭化物
- ブチルスコポラミン臭化物
- メチルオクタトロピン臭化物
- ジサイクロミン塩酸塩
- オキシフェンサイクリミン塩酸塩
- チキジウム臭化物
- ロートエキス
※ロートエキス:ロートコン(ナス科のハシリドコロ、Scopolia carniolica Jacquin または Scopolia parviflora Nakaiの根茎及び根を基原とする生薬)の抽出物
服用時の注意点
- 抗コリン作用は消化管に限定されず、散瞳による目のかすみ、異常な眩しさ、顔のほてり、頭痛、眠気、口渇、便秘、排尿困難などの副作用が現れることがある。
- 目のかすみや異常な眩しさを生じるため、乗物類の運転操作を避ける。
- 排尿困難、心臓病、緑内障の場合は使用前に医師などに相談が必要である。
- ロートエキスについては、一部が母乳中に移行して乳児の脈が速くなるおそれがあるため、使用期間中の授乳は避ける必要がある。
- メチルオクタトロピン臭化物についても、一部が母乳中に移行する。
(b) パパベリン塩酸塩
消化管の平滑筋に直接働いて胃腸の痙攣を鎮める作用を示すため、胃液分泌を抑える作用はありません。
抗コリン成分と異なり自律神経系を介してはいませんが、眼圧を上昇させる作用を示すことから、緑内障の診断を受けた人は使用前に医師などに相談が必要です。
(c) 局所麻酔成分
- アミノ安息香酸エチル
- オキセサゼイン
麻酔作用により鎮痛鎮痙効果を発揮します。
オキセサゼインは、胃液分泌を抑える作用もあります。(鎮痙+制酸)
服用時の注意点
- 消化器疾患を見過ごすおそれがあり、長期使用は避ける。
- アミノ安息香酸エチルは、メトヘモグロビン血症を起こすおそれがあり、6歳未満の小児への使用は避ける。
- オキセサゼインは妊娠中や15歳未満の小児の使用は避ける。
(d) 生薬成分
- エンゴサク
- シャクヤク
鎮痛鎮痙作用を期待して、エンゴサク(ケシ科のCorydalis turtschaninovii Besser forma yanhusuo Y. H. Chou et C. C. Hsuの塊茎を、通例、湯通ししたもの)、シャクヤク等が配合されている場合があります。
ポイントテスト1
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)オキセサゼインは、胃腸鎮痛鎮痙薬と制酸薬の両方の目的で使用される。
(2)パパべリン塩酸塩は、消化管の平滑筋に直接働いて胃腸の痙攣を鎮める作用を示すとされる。
(3)抗コリン成分が配合された医薬品を使用した後は、重大な事故につながるおそれがあるため、乗物又は機械類の運転操作を避ける必要がある。
(4)メチルベナクチジウム臭化物は、消化管の粘膜及び平滑筋に対する麻酔作用による鎮痛鎮痙の効果を期待して、配合されている場合がある。
(5)アミノ安息香酸エチルは、メトヘモグロビン血症を起こすおそれがあるため、15歳未満の小児への使用は避ける必要がある。
回答と解説
ポイントテスト1
(1)〇
(2)〇
(3)〇
(4)×:メチルベナクチジウム臭化物は抗コリン作用。
(5)×:15歳未満ではなく、6歳未満。
2)相互作用、受診勧奨
【相互作用】
抗コリン成分については、一部の抗ヒスタミン成分のように抗コリン作用を併せ持つ成分との併用により抗コリン作用が増強され、排尿困難、目のかすみや異常な眩しさ、頭痛、眠気、口渇、便秘などの副作用が現れやすくなります。
【受診勧奨】
腹部の痛みが次第に強くなったり、痛みが周期的に現れたり、30分以上続く場合、また嘔吐、発熱、下痢、血便を伴う場合には受診など対応が必要です。
また、下痢に伴う腹痛については、基本的に下痢への対処が優先され、胃腸鎮痛鎮痙薬の適用となる症状でありません。
ポイントテスト2
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)下痢に伴う腹痛については、胃腸鎮痛鎮痙薬を使用することが適当である。
回答と解説
ポイントテスト2
(1)×:下痢への対応が優先。
4 その他の消化器官用薬
1)浣腸薬
浣腸薬は、便秘の場合に排便を促すことを目的として、直腸内に適用される医薬品です。
剤形には注入剤(肛門から薬液を注入するもの)のほか、坐剤があります。
浣腸薬は、繰り返し使用すると直腸の感受性の低下(いわゆる慣れ)が生じて効果が弱くなるため、連用はしないこととされています。
また、直腸の急激な動きに刺激されて流産・早産を誘発するおそれがあるため、妊娠中の女性では使用を避けるべきです。
(a) 注入剤
- グリセリン
- ソルビトール
浸透圧の差によって腸管壁から水分を取り込んで直腸粘膜を刺激し、排便を促します。
使用方法
① 薬液の放出部を肛門に差し込み、薬液を押し込むように注入する。
② 注入するときはゆっくりと押し込み、注入が終わったら放出部をゆっくりと抜き取る。
注入する薬液は人肌程度に温めておくと、不快感を生じることが少ない。
③ 十分効果を得るため、便意が強まるまでしばらく我慢する。薬液が漏れ出しそうな場合は肛門を脱脂綿等で押さえておくとよい。
④ 半量等を使用する場合、残量を再利用すると感染のおそれがあるので使用後は廃棄する。
使用時の注意点
- 使用時の体調によっては肛門部に熱感、不快感を生じることがある。
- グリセリン使用後の排便時に血圧低下を生じて、立ちくらみの症状が現れるとの報告がある。
- 肛門や直腸の粘膜が出血しているときに使用されると、グリセリンが血管内に入って、赤血球の破壊や腎不全を引き起こすおそれがある。
(b) 坐剤
- ビサコジル
- 炭酸水素ナトリウム
炭酸水素ナトリウムは直腸内で徐々に分解して炭酸ガスを発生することで、直腸を刺激し排便を促します。
ビサコジルは第3章-8日目:Ⅲ-②腸の薬を参照
使用方法
① 坐薬が柔らかい場合には、冷やした後に使用する。また、硬すぎる場合には、柔らかくなった後に使用する。
無理に挿入すると直腸粘膜を傷つけるおそれがある。
② 十分効果を得るため、便意が強まるまでしばらく我慢する。
ポイントテスト3
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)浣腸薬は、便秘の場合に排便を促すことを目的として、直腸内に適用される医薬品であり、繰り返し使用しても直腸の感受性の低下(いわゆる慣れ)が生じないため効果が弱くなることはない。
(2)浣腸薬は一般に、直腸の急激な動きに刺激されて流産・早産を誘発するおそれがあるため、妊婦又は妊娠していると思われる女性では使用を避けるべきである。
(3)グリセリンが配合された浣腸薬では、排便時に血圧低下を生じて、立ちくらみの症状が現れるとの報告がある。
(4)浣腸薬の坐剤を挿入した後すぐに排便を試みると、坐剤が排出されて効果が十分得られないことから、便意が強まるまでしばらく我慢する。
(5)ビサコジルは、直腸内で徐々に分解され炭酸ガスの微細な気泡を発生する。
回答と解説
ポイントテスト3
(1)×:慣れが生じ、効果が弱まる。
(2)〇
(3)〇
(4)〇
(5)×:ビサコジルではなく、炭酸水素ナトリウム。
2)駆虫薬
駆虫薬は、腸管内の寄生虫を駆除するために用いられる医薬品です。
一般用医薬品の駆虫薬が対象とする寄生虫は、回虫と蟯虫です。
いずれも手指や食物に付着した虫卵が口から入ることで感染します。
感染は衣食を共にする家族全員に広がっている可能性があるため、感染が確認された場合には家族も一緒に駆虫を図ることが基本です。
回虫:
孵化した幼虫が腸管壁から入り込んで、肺に達した後に気道から再び消化管内に入って成虫となります。
そのため腹痛や下痢、栄養障害等の消化器症状のほか、呼吸器にも障害を引き起こすことがあります。
蟯虫:
肛門から這い出してその周囲に産卵するため、肛門部の痒みやそれに伴う不眠、神経症を引き起こすことがあります。
駆虫薬:
駆虫成分が腸管内において薬効をもたらす局所作用を目的とします。
消化管からの駆虫成分の吸収は好ましくない全身作用(頭痛、めまい等の副作用)を生じる原因となるため、極力少ないことが望ましいです。
食後の服用では駆虫成分の吸収が高まり全身性の副作用の原因となるため、空腹時に使用するものが多いです。
ヒマシ油と併用すると腸管内で駆虫成分が吸収されやすくなるため、併用は避ける必要があります。
駆虫薬は腸管内に生息する虫体にのみ作用し、幼虫(回虫の場合)には駆虫作用が及ばないため、成虫となった頃に再度使用しないと完全に駆除できません。再度駆虫を必要とする場合には、1ヵ月以上間隔を置いてから使用することとされています。
代表的な駆虫成分、主な副作用
- サントニン
- カイニン酸
- ピペラジンリン酸塩
- パモ酸ピルビニウム
(a) サントニン
回虫の自発運動を抑える作用を示し、虫体を排便とともに排出させます。
服用後、一時的に物が黄色く見えたり、耳鳴り、口渇が現れることがあります。
サントニンは肝臓で代謝されるため、肝臓病の診断を受けた人では、症状の悪化の恐れがあります。
(b) カイニン酸
回虫に痙攣を起こさせる作用を示し、虫体を排便とともに排出させます。
カイニン酸を含む生薬成分として、マクリ(フジマツモ科のマクリの全藻を基原とする生薬)が配合されている場合もあります。
(c) ピペラジンリン酸塩
アセチルコリン伝達を妨げて、回虫及び蟯虫の運動筋を麻痺させる作用を示し、虫体を排便とともに排出させます。
副作用として痙攣、倦怠感、眠気、食欲不振、下痢、便秘などが現れることがあります。
(d) パモ酸ピルビニウム
蟯虫の呼吸や栄養分の代謝を抑えて殺虫作用を示します。
赤~赤褐色の成分で、尿や糞便を赤く着色することがあります。
また空腹時に服用することとなっていませんが、吸収が高まるという同様の理由から、脂質分の多い食事やアルコール摂取は避けるべきです。
ポイントテスト4
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)駆虫薬は腸管内に生息する虫体にのみ作用し、虫卵や腸管内以外に潜伏した幼虫(回虫の場合)には駆虫作用が及ばないため、それらが成虫となった頃にあらためて使用しないと完全に駆除できない。
(2)駆虫薬はその有効成分(駆虫成分)が腸管内において薬効をもたらす局所作用を目的とする医薬品であり、消化管からの駆虫成分の吸収は好ましくない全身作用(頭痛、めまい等の副作用)を生じる原因となるため、極力少ないことが望ましい。
(3)サントニンの服用後、一時的に物が黄色く見えたり、耳鳴り、口渇が現れることがある。
(4)パモ酸ピルビニウムは、アセチルコリン伝達を妨げて、回虫及び蟯虫の運動筋を麻痺させる作用を示し、虫体を排便とともに排出させることを目的として用いられる。
(5)回虫や蟯虫の感染は、その感染経路から、通常、衣食を共にする家族全員にその可能性があるため、虫卵検査を受けて感染が確認された場合には、一緒に駆虫を図ることが基本となる。
回答と解説
ポイントテスト4
(1)〇
(2)〇
(3)〇
(4)×:パモ酸ピルビニウムではなく、ピペラジンリン酸塩
(5)〇
ページ内の薬剤一覧
胃腸鎮痛鎮痙薬 | ||||
分類 | 成分名 | 作用 | ||
抗コリン薬 | メチルベナクチジウム臭化物 | 副交感神経の伝達物質であるアセチルコリンと受容体の反応を妨げる(抗コリン作用)ことで、胃痛、腹痛、を鎮める
副作用:散瞳、眠気、口渇、便秘、排尿困難 |
||
ブチルスコポラミン臭化物 | ||||
メチルオクタトロピン臭化物 | ||||
ジサイクロミン塩酸塩 | ||||
オキシフェンサイクリミン塩酸塩 | ||||
チキジウム臭化物 | ||||
ロートエキス(生薬成分) | ||||
パパベリン塩酸塩 | 消化管の平滑筋に直接働いて胃腸の痙攣を鎮める | |||
局所麻酔成分 | アミノ安息香酸エチル | 麻酔作用により鎮痛鎮痙の効果 | ||
オキセサゼイン | ||||
生薬成分 | エンゴサク | 鎮痛鎮痙作用 | ||
シャクヤク | ||||
浣腸 | ||||
注入型 | グリセリン | 浸透圧によって腸管壁から水分を取り込んで排便を促す | ||
ソルビトール | ||||
坐剤 | ビサコジル | 大腸刺激性し排便を促す | ||
炭酸水素ナトリウム | 炭酸ガスにより排便を促す | |||
駆虫薬 | ||||
駆虫薬 | サントニン | 回虫の自発運動を抑える | ||
カイニン酸 | 回虫に痙攣を起こさせる | |||
ピペラジンリン酸塩 | 回虫及び蟯虫の運動筋を麻痺させる | |||
パモ酸ピルビニウム | 蟯虫の呼吸や栄養分の代謝を抑える |