登録販売者試験の解説とポイントを過去問題にフォーカスして記載していきます。
厚生労働省の試験問題作成の手引きを基に分かり易い内容に変えて解説しています。
過去問題から作成したポイントテストもありますので、
是非解いて見てくださいね。
独学で学ばれている方も含め問題なく解けることが実感できるかと思います。
第5章全体のポイントについては、第5章-1日目:Ⅰ-① 添付文書 の読み方をご覧ください。
Ⅲ 医薬品の副作用等による健康被害の救済
サリドマイド事件、スモン事件等を踏まえ、市販後の安全対策の強化を図るため、再審査・再評価制度の創設、副作用等報告制度の整備、緊急命令、廃棄・回収命令に関する法整備等がなされました。
それらと併せて、医薬品副作用被害救済基金法(現「独立行政法人医薬品医療機器総合機構法」 )による救済制度が創設されました。
サリドマイド等について詳しくは、第1章-4日目:Ⅳ 薬害 の歴史を参照
医薬品は、予見し得ない副作用の発生や副作用が起こり得ることが分かっていても、医療上の必要性から使用せざるをえない場合もあります。
このため、医薬品を適正に使用したにもかかわらず副作用による一定の健康被害が生じた場合に、医療費等の給付を行い、被害者の迅速な救済を図ろうというのが、医薬品副作用被害救済制度です。
1)医薬品副作用被害救済制度
本制度は、製薬企業の社会的責任に基づく公的制度として1980年5月より運営が開始されました。
医薬品副作用被害救済制度の流れ
- 健康被害を受けた本人(または家族)が総合機構へ給付請求
- 総合機構は厚生労働大臣へ判定の申出
- 「健康被害が医薬品の適正使用による副作用なのか」など、医学的薬学的判断を要する事項について薬事・食品衛生審議会へ諮問
- 薬事・食品衛生審議会から答申
- 厚生労働大臣が判定し、結果を通知
- 判定結果に基づいて、医療費、障害年金、遺族年金等の各種給付
救済給付業務に必要な費用のうち、給付費については製造販売業者から年度ごとに納付される拠出金が充てられます。
そのほか事務費については2分の1相当額が国庫補助により賄われています。
この医薬品副作用被害救済制度に加え、適正使用した生物由来製品を介した感染などによる健康被害の迅速な救済を図ることを目的とした「生物由来製品感染等被害救済制度」が創設されています。
その他、総合機構は次の業務を行っています。
- 関係製薬企業又は国からの委託を受け、裁判上の和解が成立したスモン患者に対して健康管理手当や介護費用の支払い。
- 友愛福祉財団からの委託を受け、血液製剤によるHIV感染者・発症者に対する健康管理費用の支給。
ポイントテスト1
医薬品副作用被害救済制度について下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)医薬品の適正使用の有無にかかわらず、副作用によって一定程度以上の健康被害が生じた場合に、医療費等の諸給付を行うものである。
(2)健康被害を受けた本人(又は家族)の給付請求を受けて、その健康被害が医薬品の副作用によるものかどうか、医薬品が適正に使用されたかどうかなど、医学的薬学的判断を要する事項について独立行政法人医薬品医療機器総合機構の諮問・答申を経て、厚生労働大臣が判定する。
(3)救済給付業務に必要な費用のうち、給付費については、製造業者が年度ごとに納付する拠出金が充てられる。
回答と解説
ポイントテスト1
(1)×:適正使用した時のみ。
(2)×:総合機構ではなく、薬事・食品衛生審議会。
(3)×:製造業者ではなく、製造販売業者。
2)医薬品副作用被害救済制度等への案内、窓口紹介
要指導医薬品、一般用医薬品の副作用で、健康被害が救済給付の対象となると思われた際に、販売等に従事する専門家には購入者等に対して救済制度の説明や総合機構の相談窓口などを紹介し、相談を促すなどの対応が期待されます。
給付の種類と範囲
(a) 給付の種類
給付の種類によっては請求期限があり、期限を過ぎた分については請求ができません。
給付の種類 | 請求の期限 | |
医療費 | 医薬品の副作用による疾病の治療(※1)に要した費用を実費補償するもの(ただし、健康保険等による給付の額を差し引いた自己負担分。) | 医療費の支給の対象となる費用の支払いが行われたときから5年以内 |
医療手当 | 医薬品の副作用による疾病の治療(※1)に伴う医療費以外の費用の負担に着目して給付されるもの(定額) | 請求に係る医療が行われた日の属する月の翌月の初日から5年以内 |
障害年金 | 医薬品の副作用により一定程度の障害の状態にある18歳以上の人の生活補償等を目的として給付されるもの(定額) | 請求期限なし |
障害児養育年金 | 医薬品の副作用により一定程度の障害の状態にある18歳未満の人を養育する人に対して給付されるもの(定額) | 請求期限なし |
遺族年金 | 生計維持者が医薬品の副作用により死亡した場合に、その遺族の生活の立て直し等を目的として給付されるもの(定額) ただし、最高10年間を限度とする。 | 死亡のときから5年以内(※2)。 遺族年金を受けることができる先順位者が死亡した場合には、その死亡の ときから2年以内。 |
遺族一時金 | 生計維持者以外の人が医薬品の副作用により死亡した場合に、その遺族に対する見舞等を目的として給付されるもの(定額) | 遺族年金と同じ |
葬祭料 | 医薬品の副作用により死亡した人の葬祭を行うことに伴う出費に着目して給付されるもの(定額) | 遺族年金と同じ |
(※1)医療費、医療手当の給付の対象となるのは副作用による疾病が「入院治療を必要とする程度」の場合 | ||
(※2)死亡前に医療費、医療手当、障害年金又は障害児養育年金の支給決定があった場合には、死亡のときから2年以内。 |
(b) 救済給付の支給対象範囲
救済給付の対象
- 用法・用量、使用上の注意に従って使用されていることが基本となる。
医薬品の不適正な使用による健康被害については、給付対象に含まれません。
対象となる健康被害の程度
- 副作用による疾病のため、入院を必要とする程度の医療(必ずしも入院治療に限るわけではありません)を受ける場合
- 副作用による重い後遺障害(日常生活に著しい制限を受ける程度以上の障害)が残った場合
特に医療機関での治療を要さずに寛解したような軽度のものについては給付対象に含まれません。
救済制度の対象とならない医薬品
- 要指導医薬品、一般用医薬品では、殺虫剤・殺鼠剤、殺菌消毒剤(人体に直接使用するものを除く)、一般用検査薬、一部の日局収載医薬品(精製水、ワセリン等)
- 製品不良など、製薬企業に損害賠償責任がある場合
- 無承認無許可医薬品(個人輸入医薬品も含む)
(c) 救済給付の請求にあたって必要な書類
要指導医薬品または一般用医薬品に関しては下記証明書などが必要になります。
- 医師の診断書
- 要した医療費を証明する書類(受診証明書等)
- 医薬品を販売等した薬局開設者、医薬品の販売業者が作成した販売証明書
【医薬品PLセンター】
医薬品副作用被害救済制度の対象とならないケースのうち、製品不良など、製薬企業に損害賠償責任がある場合には、「医薬品PLセンター」への相談が推奨されます。
医薬品PLセンターは平成7年7月、製造物責任法(PL法)の施行と同時に日本製薬団体連合会において開設されました。
医薬品又は医薬部外品に関する苦情(健康被害以外の損害も含まれる)について製造販売元の企業と交渉するに当たって公平・中立な立場で受け付け、交渉の仲介や調整を行い、裁判によらない迅速な解決に導くことを目的としています。
化粧品は対象外です。注意しよう!
ポイントテスト2
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)医療手当は、請求に係る医療が行われた日の属する月の翌月の初日から5年以内に請求を行う必要がある。
(2) 医療費の給付は、医薬品の副作用による疾病の治療に要した費用を定額補償するものである。
(3)遺族年金の給付は、給付期間に制限がある。
(4)障害年金は、医薬品の副作用により一定程度の障害の状態にある20歳以上の人の生活補償等を目的として給付される。
(5)一般用医薬品の殺虫剤を使用して、入院治療が必要と認められる程度の健康被害が生じた場合は救済制度が認められる。
回答と解説
ポイントテスト2
(1)○
(2)×:医療費の給付は実費補償
(3)○
(4)×:18歳以上が対象
(5)×:殺虫剤は対象外
Ⅳ 一般用医薬品に関する主な安全対策
次に出てくる年号は特に覚えなくてOK
(a) アンプル入りかぜ薬
対象成分
解熱鎮痛成分のアミノピリン、スルピリン(ピリン系)
背景
アミノピリン、スルピリンのアンプル入りかぜ薬の使用による重篤な副作用(ショック)で、1959年から1965年までの間に計38名の死亡例が発生しました。
対応
アンプル剤は他の剤形に比べて吸収が速く、血中濃度が急速に高値に達するため、通常用量でも副作用を生じやすいことが確認されたことから、
厚生省(当時)より関係製薬企業に対し、アンプル入りかぜ薬製品の回収が要請されました。
その後、アンプル剤以外の一般用かぜ薬についても承認基準が制定され、成分・分量、効能・効果等が見直されました。
(b) 小柴胡湯による間質性肺炎
対象成分
小柴胡湯
背景
小柴胡湯による間質性肺炎については、1991年4月以降、使用上の注意に記載されていましたが、
小柴胡湯とインターフェロン製剤の併用例による間質性肺炎が報告されたことから、1994年1月、インターフェロン製剤との併用を禁忌とする旨の使用上の注意の改訂がなされました。
その後も慢性肝炎患者が小柴胡湯を使用して間質性肺炎が発症し、死亡を含む重篤な転帰に至った例も発生しました。
対応
1996年3月、厚生省(当時)より関係製薬企業に対して緊急安全性情報の配布が指示されました。
(c) 一般用かぜ薬による間質性肺炎
対象成分
一般用かぜ薬
背景
2003年5月までに一般用かぜ薬の使用によると疑われる間質性肺炎の発生事例が、計26例報告されました。
対応
厚生労働省は、 下記2点を踏まえ、一般用かぜ薬全般について使用上の注意の改訂を指示することとしました。
● 一般用かぜ薬は、消費者が自らの選択により購入して使用するものであること
● 間質性肺炎は重篤な副作用であり、その初期症状はかぜ諸症状と区別が難しく、症状が悪化した場合には注意が必要なこと
使用上の注意の改定内容
「5~6回服用しても症状が良くならない場合には服用を中止して、専門家に相談する」に加え、下記が追加されました。
「まれに間質性肺炎の重篤な症状が起きることがあり、その症状は、かぜの諸症状と区別が難しいため、症状が悪化した場合には服用を中止して医師の診療を受ける」
(d) 塩酸フェニルプロパノールアミン含有医薬品
対象成分
塩酸フェニルプロパノールアミン(PPA)
背景
PPAは、鼻充血や結膜充血を除去し、鼻づまりなどの緩和を目的として、鼻炎用内服薬、鎮咳去痰薬、かぜ薬などに配合されていました。
2000年5月米国において、女性が食欲抑制剤(日本のPPA含有医薬品より高容量)として使用した場合に、出血性脳卒中の発生リスクとの関連性が高いとの報告がなされ、米国食品医薬品庁から、米国内におけるPPA含有医薬品の自主的な販売中止が要請されました。
我が国では食欲抑制剤として承認されていないことなどから、直ちに販売中止をせず、心臓病の人や脳出血の既往がある人等は使用しないよう注意喚起を行っていました。
しかし、2003年8月までに、PPA含有一般用医薬品による脳出血などの副作用症例が複数報告され、それらの多くが用法・用量の範囲を超えた使用又は禁忌とされている高血圧症患者の使用によるものでした。
対応
厚生労働省から関係製薬企業等に対して、使用上の注意の改訂、情報提供の徹底等を行うとともに、代替成分としてプソイドエフェドリン塩酸塩(PSE)等への切替え指示がなされました。
ポイントテスト3
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)一般用かぜ薬の使用上の注意においては、「まれに間質性肺炎の重篤な症状が起きることがあり、その症状は、かぜの諸症状と区別が難しいため、症状が悪化した場合には服用を中止して医師の診療を受ける」旨の注意喚起がなされている。
(2)インターフェロン製剤を使用している患者や慢性肝炎患者が小柴胡湯を使用することによる間質性肺炎の発症が報告されている。
(3)プソイドエフェドリン塩酸塩(PSE)は、鼻みず、鼻づまり等の症状の緩和を目的として、鼻炎用内服薬、鎮咳去痰薬、かぜ薬等に配合されていたが、出血性脳卒中の発生リスクとの関連性が高いことから塩酸フェニルプロパノールアミン(PPA)等への切り替えが行われた。
(4)アンプル剤は他の剤形(錠剤、散剤等)に比べて吸収が遅く、血中濃度がゆっくりと高値に達するため、通常用量でも副作用を生じやすいことが確認されたことから、1965年、厚生省(当時)より関係製薬企業に対し、アンプル入りかぜ薬製品の回収が要請された。
回答と解説
(1)○
(2)○
(3)×:PPAからPSE等への切り替えが行われた。
(4)×:アンプル剤は吸収が早く、血中濃度が急速に高まる。
Ⅴ 医薬品の適正使用のための啓発活動
登録販売者には、医薬関係者(専門家)として、適切なセルフメディケーションの普及定着、適正使用の推進のための活動に積極的に参加、協力することが期待されています。
啓蒙活動
「薬と健康の週間」
期間
毎年10月17日~23日の1週間
実施目的
医薬品の特質及び使用・取扱い等について正しい知識を広く生活者に浸透させ、保健衛生の維持向上に貢献することを目的とし、国、自治体、関係団体等による広報活動やイベント等が実施されています。
「ダメ。ゼッタイ。」普及運動
期間
毎年6月20日~7月19日までの1ヶ月間
実施目的
「6・26国際麻薬乱用撲滅デー」を普及し薬物乱用防止を一層推進するため、国、自治体、関係団体等により実施されています。
薬物乱用や薬物依存は違法薬物だけでなく、一般用医薬品によっても生じ得ます。
薬物乱用は自身の健康のほか、社会的弊害を生じるおそれが大きいものです。
特に、青少年では薬物乱用による危険性の理解が必ずしも十分でなく、好奇心から身近に入手できる薬物を興味本位で乱用することがあります。
医薬品の適正使用の重要性等に関して、小中学生のうちからの啓発が重要です。
ポイントテスト4
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)保健衛生の維持向上に貢献することを目的とし、毎年10月17 日からの1週間を、「薬と健康の週間」として、広報活動やイベント等が実施されている。
(2)薬物乱用防止を一層推進するため、毎年6月20日からの1ヶ月間、「ダメ。ゼッタイ。」 普及運動が実施されている。
(3)医薬品の適正使用の重要性等に関しては、認識や理解が必ずしも十分とはいえない小中学生には積極的に啓発すべきではない。
(4)薬物乱用は、社会的な弊害は生じないが、乱用者自身の健康を害する。
回答と解説
ポイントテスト4
(1)○
(2)○
(3)×:小中学生のうちからの啓蒙が重要
(4)×:自身の健康被害と共に、社会的弊害も生じる