登録販売者試験の解説とポイントを過去問題にフォーカスして記載していきます。
厚生労働省の試験問題作成の手引きを基に分かり易い内容に変えて解説しています。
過去問題から作成したポイントテストもありますので、是非解いて見てくださいね。
独学で学ばれている方も含め問題なく解けることが実感できるかと思います。
また第3章全体のポイントについては、第3章-1日目:Ⅰ-①:かぜ薬をご覧ください。
1 強心薬
1)動悸、息切れ等を生じる原因と強心薬の働き
(a) 動悸、息切れ
心臓は、血液を全身に循環させるポンプの働きを担っています。
通常、自律神経系によって無意識のうちに調整がなされており、激しい運動をしたとき、興奮したときの動悸や息切れは、正常な健康状態でも現れます。
動悸
心臓の働きが低下して十分な血液を送り出せなくなると、脈拍数を増やし、血液の不足を補おうとして起こる。
息切れ
心臓から十分な血液が送り出されないと酸素供給が低下するため、呼吸運動によって取り込む空気量を増やすことで補おうと息切れが起こる。
(b) 強心薬の働き
強心薬は、心臓の働きを整えて、動悸や息切れなどの症状改善を目的とする医薬品です。
心筋に作用して、収縮力を高める成分(強心成分)を主体として配合されます。
ポイントテスト1
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)強心薬は、疲労やストレス等による軽度の心臓の働きの乱れについて、心臓の働きを整えて、動悸や息切れ等の症状の改善を目的とする医薬品である。心筋に作用して、その収縮力を高めるとされる成分(強心成分)を主体として配合される。
(2)心臓の働きは、通常、体性神経系によって無意識のうちに調整がなされている。
回答と解説
ポイントテスト1
(1)〇
(2)×:体性神経系ではなく、自律神経系
2)代表的な配合成分等、主な副作用
(a) 強心成分
- センソ
- ゴオウ
- ジャコウ
- ロクジョウ
心筋に直接刺激を与え、収縮力を高める作用(強心作用)を期待して、用いられる生薬成分です。
① センソ
ヒキガエル科のアジアヒキガエル等の耳腺の分泌物を集めたものを基原とする生薬で、微量で強い強心作用を示し、有効域が比較的狭い成分です。
そのため1日用量中センソ 5mg を超える医薬品は劇薬に指定され、一般用医薬品では、5mg 以下となるよう用法・用量が定められています。
通常用量においても、悪心、嘔吐の副作用が現れることがあります。
また皮膚や粘膜に触れると局所麻酔作用を示すため、丸薬、錠剤の固形製剤は、噛まずに服用することとされています。
② ジャコウ
シカ科のジャコウジカの雄の麝香腺分泌物を基原とする生薬で、強心作用のほか、呼吸中枢を刺激して呼吸機能を高め、意識をはっきりさせます。
③ゴオウ
ウシ科のウシの胆嚢中に生じた結石を基原とする生薬で、強心作用のほか、末梢血管の拡張による血圧降下、興奮を静める作用があります。
④ロクジョウ
シカ科の Cervus nippon Temminck、Cervus elaphus Linné、Cervus canadensis Erxleben またはその他同属動物の雄鹿の角化していない幼角を基原とする生薬で、強心作用の他、強壮、血行促進作用があります。
(b) 強心成分以外の配合成分
- リュウノウ
- シンジュ
強心成分の働きを助ける効果とともに、鎮静、強壮などの作用を目的とする生薬成分を組み合わせて配合されています。
① リュウノウ
中枢神経系の刺激作用による気つけ効果を期待して用いられる。
リュウノウ中に存在する主要な物質として、ボルネオールが配合されている場合もある。
② シンジュ
ウグイスガイ科のアコヤガイ、シンジュガイ又はクロチョウガイ等の外套膜組成中に病的に形成された顆粒状物質を基原とする生薬で、鎮静作用を期待して用いられる。
③ その他
レイヨウカク、ジンコウ、動物胆(ユウタンを含む。)、サフラン、ニンジン、インヨウカク等が配合されている場合がある。
※ レイヨウカクの絶滅のおそれのある野生動植物種に関する規制により、入手困難となることが予想されており、レイヨウカクを含有する強心薬のうち、センソまたはゴオウを主体とする一般用医薬品においては、スイギュウカクへ代替する医薬品もあります。
漢方処方製剤
- 苓桂朮甘湯
体力中等度以下で、めまい、ふらつきがあり、ときにのぼせや動悸があるものの立ちくらみ、めまい、頭痛、耳鳴り、動悸 、息切れ、神経症、神経過敏に適す。
強心作用が期待される生薬は含まれず、主に利尿作用がメインとなります。
構成生薬としてカンゾウを含有
高血圧、心臓病、腎臓病の診断を受けた人では、偽アルドステロン症を生じやすいため、注意が必要です。
ポイントテスト2
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)センソは、ヒキガエル科のアジアヒキガエル等の耳腺の分泌物を集めたものを基原とする生薬で、有効域が比較的狭く、一般用医薬品では1日用量が5mg以下となるよう用法・用量が定められている。
(2) ロクジョウは、ウシ科のウシの胆嚢中に生じた結石を基原とする生薬で、強心作用のほか、末梢血管の拡張による血圧降下、興奮を静める等の作用があるとされる。
(3)ジャコウは、シカ科のジャコウジカの雄の麝香腺分泌物を基原とする生薬で、強心作用のほか、呼吸中枢を刺激して呼吸機能を高めたり、意識をはっきりさせる作用があるとされる。
(4)苓桂朮甘湯は、強心作用が期待されるセンソを含む
回答と解説
ポイントテスト2
(1)〇
(2)×:ロクジョウではなく、ゴオウ。
(3)〇
(4)×:苓桂朮甘湯には強心作用がありません。
3)受診勧奨
強心薬については一般に、5~6日間使用して症状の改善がみられない場合には、心臓以外の要因、例えば、呼吸器疾患、貧血、高血圧症、甲状腺機能の異常などのほか、精神神経系の疾患も考えられ、医療機関の受診を勧奨することが重要です。
激しい運動をしていない状態での突発的に動悸や息切れは、早めに医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
ポイントテスト3
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)一般に、強心薬を5~6日間使用して症状の改善がみられない場合には、心臓以外の要因、例えば、呼吸器疾患、貧血、高血圧症、甲状腺機能の異常等のほか、精神神経系の疾患も考えられる。
回答と解説
ポイントテスト3
(1)〇
2 高コレステロール改善薬
1)血中コレステロールと高コレステロール改善成分の働き
コレステロールは細胞の構成成分で、胆汁酸や副腎皮質ホルモンの産生に重要な物質です。
コレステロールの産生および代謝は、主として肝臓で行われます。
コレステロールは水に溶けにくいため、血液中では血漿タンパク質と結合したリポタンパク質となって存在します。
リポタンパク質は比重によっていくつかの種類に分類されます。
低密度リポタンパク質(LDL)
- コレステロールを肝臓から末梢組織へと運ぶ
高密度リポタンパク質(HDL)
- 末梢組織のコレステロールを取り込んで肝臓へと運ぶ
俗に言う悪玉コレステロールはLDLコレステロール、善玉コレステロールはHDLコレステロールです。
血液中のLDLが多く、HDLが少ないと、コレステロールが末梢組織側に偏って蓄積し、心臓病や肥満、動脈硬化症などの生活習慣病につながる危険性が高くなりますが、生活習慣病を生じる以前の段階では自覚症状を伴いません。
医療機関で測定する検査値として、LDLが140mg/dL以上、HDLが40mg/dL 未満、中性脂肪が150mg/dL 以上のいずれかである状態を、脂質異常症といいます。
高コレステロール改善薬は、血中コレステロール異常の改善、血中コレステロール異常に伴う末梢血行障害の緩和を目的としています。
2)代表的な配合成分、主な副作用
(a) 高コレステロール改善成分
- 大豆油不けん化物(ソイステロール)
- リノール酸
- ポリエンホスファチジルコリン
- パンテチン
大豆油不けん化物(ソイステロール)
腸管におけるコレステロールの吸収を抑えます。
リノール酸、ポリエンホスファチジルコリン
コレステロールと結合して、代謝されやすいコレステロールエステルを形成し、肝臓において代謝を促します。
パンテチン
LDLの異化排泄を促進し、リポタンパクリパーゼ活性を高めて、HDL産生を高めます。
(b) ビタミン成分
- ビタミンB2
(リボフラビン酪酸エステルなど) - ビタミンE
(トコフェロール酢酸エステル)
① ビタミンB2(リボフラビン酪酸エステルなど)
血漿中に過剰に存在するコレステロールは、過酸化脂質となって種々の障害の原因となります。
リボフラビン酪酸エステルなどはコレステロールの生合成抑制と排泄・異化促進作用、中性脂肪抑制作用、過酸化脂質分解作用を有します。
また摂取によって尿が黄色くなることがありますが、使用を中止する異常ではありません。
② ビタミンE(トコフェロール酢酸エステル)
コレステロールからの過酸化脂質の生成を抑えるほか、血行を促進し、血中コレステロール異常に伴う末梢血行障害を緩和します。
同様の作用を期待して、ガンマ-オリザノールが配合されている場合もあります。
ポイントテスト4
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)高密度リポタンパク質(HDL)は、コレステロールを肝臓から末梢組織へと運ぶリポタンパク質である。
(2)コレステロールは水に溶けやすい物質であるため、血液中では血漿タンパク質と結合したリポタンパク質となって存在する。
(3)血漿中のリポタンパク質のバランスの乱れは、生活習慣病を生じる以前の段階では自覚症状を伴うことが多い。
(4)大豆油不けん化物(ソイステロール)には、腸管におけるコレステロールの吸収を抑える働きがあるとされる。
(5)リボフラビン酪酸エステルは、コレステロールから過酸化脂質の生成を抑えるほか、末梢血管における血行を促進する作用があるとされ、血中コレステロール異常に伴う末梢血行障害(手足の冷え、痺れ)の緩和等を目的として用いられる。
回答と解説
ポイントテスト4
(1)×:HDLではなく、LDL。
(2)×:コレステロールは水に溶けにくい物質。
(3)×:自覚症状は伴わない。
(4)〇
(5)×:リボフラビン酪酸エステルではなく、ビタミンE(トコフェロール酢酸エステル)
3)生活習慣改善へのアドバイス、受診勧奨等
ウエスト周囲径(腹囲)の目安として、男性なら85cm、女性なら90cm 以上である場合には生活習慣病を生じるリスクが高まるとされており、いわゆるメタボリックシンドロームの予防には血中コレステロール値に留意することが重要です。
コレステロールは、食事から摂取された糖および脂質から主に産生されるため、高コレステロールの対処は食事・運動療法がメインであり、高コレステロール改善薬は補助的な役割です。
ただし、高コレステロール改善薬は、ウエスト周囲径を減少させるなどの痩せる効果を目的とする医薬品ではありません。
ポイントテスト5
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)高コレステロール改善薬は、ウエスト周囲径(腹囲)を減少させるなどの痩身効果を目的とする医薬品である。
回答と解説
ポイントテスト5
(1)×:痩せる効果を目的としていない。
ページ内の薬剤一覧
強心薬 |
||||
分類 |
成分名 |
作用 |
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生薬成分 |
センソ |
強心作用 |
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ゴオウ |
強心、緊張や興奮を鎮める 血液の循環を促す |
|||
ジャコウ |
強心、呼吸機能を高め、意識をはっきりさせる,緊張や興奮を鎮める血液の循環を促す |
|||
ロクジョウ |
強心、強壮、血行促進 |
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リュウノウ |
気つけ効果 |
|||
シンジュ |
鎮静作用 |
|||
漢方処方製剤 |
苓桂朮甘湯 ㋕ |
のぼせや動悸がある立ちくらみ 強心作用の生薬は含有せず、主に利尿 |
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高コレステロール改善薬 |
||||
高コレステロール改善成分 |
大豆油不けん化物(ソイステロール) |
コレステロールの吸収を抑える |
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リノール酸 |
コレステロールの代謝を促す |
|||
ポリエンホスファチジルコリン |
||||
パンテチン |
LDLの排泄とHDLの産生 |
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ビタミン類 |
ビタミンB2(リボフラビン酪酸エステル) |
コレステロールの生合成抑制と排泄 過酸化脂質の分解 |
||
ビタミンE(トコフェロール酢酸エステル) |
過酸化脂質生成抑制 血行促進 |