登録販売者試験の解説とポイントを過去問題にフォーカスして記載していきます。
厚生労働省の試験問題作成の手引きを基に分かり易い内容に変えて解説しています。
過去問題から作成したポイントテストもありますので、是非解いて見てくださいね。
独学で学ばれている方も含め問題なく解けることが実感できるかと思います。
また第3章全体のポイントについては、第3章-1日目:Ⅰ-①:かぜ薬をご覧ください。
3 貧血用薬(鉄製剤)
1)貧血症状と鉄製剤の働き
貧血は、その原因により鉄欠乏性貧血、ビタミン欠乏性貧血などに分類されます。
一般的な症状として、疲労、動悸、息切れ、めまい、皮膚や粘膜の蒼白、下半身のむくみなどが現れます。
鉄分は、赤血球が酸素を運搬する上で重要なヘモグロビンの産生に不可欠なミネラルです。
貧血用薬(鉄製剤)は、鉄欠乏性貧血に対して不足している鉄分を補充し、造血機能の回復を図る医薬品です。
鉄分摂取不足の段階
- 体内の貯蔵鉄、血清鉄が先に減少するため、ヘモグロビン量は変化せず貧血症状は現れない。
- 持続的に鉄が欠乏することで、ヘモグロビンが減少して貧血症状が現れる。
鉄の欠乏には摂取不足と吸収障害、出血による減少が考えられます。
月経血損失のある女性、鉄要求量の増加する妊婦・母乳を与える女性では、鉄欠乏状態を生じやすいです。
ポイントテスト1
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)鉄分の摂取不足が生じた場合、直ちにヘモグロビン量が減少し、貧血の症状が現れる。
回答と解説
ポイントテスト1
(1)×:持続的な鉄欠乏により貧血の症状が現れる。
2)代表的な配合成分、主な副作用
(a) 鉄分
- フマル酸第一鉄
- 溶性ピロリン酸第二鉄
- 可溶性含糖酸化鉄
- クエン酸鉄アンモニウム
不足した鉄分を補充します。
服用時の副作用
鉄製剤を服用すると便が黒くなりますが、使用の中止を要する副作用ではありません。
ただし、鉄製剤の服用前から便が黒い場合は消化管内で出血している場合もあるため、注意が必要です。
悪心、嘔吐、食欲不振、胃部不快感、腹痛、便秘、下痢等の胃腸障害があります。また鉄分の吸収は空腹時のほうが高いですが、消化器系への副作用を軽減するには、食後に服用することが望ましいです。
(b) 鉄以外の金属成分
- 硫酸銅
- 硫酸コバルト
- 硫酸マンガン
硫酸銅
銅はヘモグロビンの産生過程で、鉄の代謝や輸送に重要な役割を持ち、補充した鉄分を利用してヘモグロビンが産生されるのを助けます。
硫酸コバルト
コバルトは赤血球ができる過程で必要不可欠なビタミンB12の構成成分であり、骨髄での造血機能を高めます。
硫酸マンガン
マンガンは、糖質・脂質・タンパク質の代謝をする際に働く酵素の構成物質であり、エネルギー合成を促進します。
(c) ビタミン成分
- ビタミンB6
(ピリドキシン塩酸塩など) - ビタミンB12
(シアノコバラミン) - 葉酸
- ビタミンC
(アスコルビン酸など)
ビタミンB6
(ピリドキシン塩酸塩など)
ヘモグロビン産生に必要なビタミンです。
ビタミンB12、葉酸
(シアノコバラミン)
正常な赤血球の形成に働くビタミンです。
ビタミンC
(アスコルビン酸など)
消化管内で鉄が吸収されやすい状態に保ちます。
ポイントテスト2
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)鉄製剤を服用すると、便が黒くなることがある。
(2)コバルトは赤血球ができる過程で必要不可欠なビタミンCの構成成分である。
(3)鉄製剤の消化器系への副作用を軽減するには、食前に服用することが望ましい。
(4)骨髄での造血機能を高める目的で、貧血用薬に硫酸コバルトが配合されている場合がある。
(5)ビタミンC(アスコルビン酸等)は、消化管内で鉄が吸収されやすい状態に保つことを目的として用いられる。
回答と解説
ポイントテスト2
(1)〇
(2)×:ビタミンCではなく、ビタミンB12。
(3)×:食前ではなく、食後。
(4)〇
(5)〇
3)相互作用、受診勧奨
【相互作用】
服用前後30分にタンニン酸を含む飲食物(緑茶、紅茶、コーヒー、ワイン、柿など)を摂取すると、タンニン酸と反応して鉄の吸収が悪くなるため服用前後はそれらの摂取を控える必要があります。
【受診勧奨等】
貧血のうち鉄製剤で改善できるのは、鉄欠乏性貧血のみです。
なお、貧血の症状がみられる以前から予防的に貧血用薬(鉄製剤)を使用することは適当ではありません。
食生活を改善し、かつ鉄製剤の使用を2週間程度続けても症状の改善がみられない場合には、出血性の疾患による慢性的な血液の損失が原因で貧血症状が起きている可能性があり、基礎疾患の治療が優先されるべきです。
また鉄欠乏性以外の貧血による可能性もあります。
ポイントテスト3
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)鉄製剤服用の前後30分にタンニン酸を含む飲食物(緑茶、紅茶等)を摂取すると、タンニン酸と反応して鉄の吸収が促進される。
(2)貧血のうち、鉄製剤で改善できるのは、鉄不足によって貧血症状が生じている鉄欠乏性貧血のみである。
回答と解説
ポイントテスト3
(1)×:吸収が促進されるのではなく、吸収が悪くなる。
(2)〇
4 その他の循環器用薬
1)代表的な配合成分等、主な副作用
生薬成分
- コウカ
キク科のベニバナの管状花をそのまま又は黄色色素の大部分を除いたもので、ときに圧搾して板状としたものを基原とする生薬
末梢の血行を促してうっ血を除く作用があり、冷え症及び血色不良に用いられます。
生薬成分以外の成分
- ユビデカレノン
- ヘプロニカート
- イノシトールヘキサニコチネート
- ルチン
(a) ユビデカレノン
別名コエンザイムQ10
エネルギー代謝に関与する酵素の働きを助ける成分で、栄養素からエネルギーが産生される際にビタミンB群とともに働きます。
心筋の酸素利用効率を高めて収縮力を高め血液循環の改善効果を示し、動悸、息切れ、むくみの症状に用いられます。
小児において心疾患による動悸、息切れ、むくみには、医師の診療が優先されるべきであり、15歳未満の小児向けの製品はありません。
(b) ヘプロニカート、イノシトールヘキサニコチネート
いずれの化合物もニコチン酸が遊離し、そのニコチン酸の働きによって末梢の血液循環を改善する作用を示します。
ビタミンEと組み合わせて用いられる場合が多いです。
(c) ルチン
ビタミン様物質の一種で、高血圧等における毛細血管の補強、強化を期待して用いられます。
漢方処方製剤
- 三黄瀉心湯
- 七物降下湯
(a) 三黄瀉心湯 ㋟
体力中等度以上で、のぼせ気味で顔面紅潮し、精神不安、みぞおちのつかえ、便秘傾向などのあるものの高血圧の随伴症状(のぼせ、肩こり等)、鼻血、痔、出血、便秘、更年期障害、血の道症に適す。
構成生薬としてダイオウを含み、副作用に下痢をする場合がある。
(b) 七物降下湯
体力中等度以下で、顔色が悪くて疲れやすく、胃腸障害のないものの高血圧に伴う随伴症状(のぼせ、肩こり等)に適す。
小児向けの漢方処方ではなく、15歳未満の小児への使用は避ける必要がある。
ポイントテスト4
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)ユビデカレノンは、別名コエンザイムQ10とも呼ばれ、心疾患による動悸 、息切れ、むくみの症状があるような場合に使用でき、小児向けの製品も販売されている。
(2)日本薬局方収載のコウカを煎じて服用する製品は、冷え性及び血色不良に用いられる。
(3) へプロニカートは、代謝されてタンニン酸が遊離し、そのタンニン酸の働きによって末梢の血液循環を改善する作用を示すとされる。
(4)ルチンは、ビタミン様物質の一種で、高血圧等における毛細血管の補強、強化の効果を期待して用いられる。
回答と解説
ポイントテスト4
(1)×:15歳未満の小児向けの製品はない。
(2)〇
(3)×:タンニン酸ではなく、ニコチン酸
(4)〇
2)相互作用、受診勧奨
【相互作用】
コエンザイム Q10 については、食品の素材として流通することが可能となっており、そうした食品が合わせて摂取された場合、胃部不快感や吐きけ、下痢等の副作用が現れやすくなるおそれがあります。
【受診勧奨等】
高血圧や心疾患に伴う諸症状を改善する医薬品は、体質の改善または症状の緩和を主眼としており、いずれも高血圧や心疾患そのものの治療を目的とするものではありません。
ページ内の薬剤一覧
貧血 | ||||
分類 | 成分名 | 作用 | ||
鉄分 | フマル酸第一鉄 | 不足した鉄を補充します
便が黒くなります |
||
溶性ピロリン酸第二鉄 | ||||
可溶性含糖酸化鉄 | ||||
クエン酸鉄アンモニウム | ||||
銅 | 硫酸銅 | ヘモグロビンの産生を助ける | ||
コバルト | 硫酸コバルト | ビタミンB12の構成成分 骨髄の造血機能を助けます |
||
マンガン | 硫酸マンガン | エネルギー合成を促進する | ||
ビタミン類 | ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩) | ヘモグロビン産生に必要なビタミン | ||
ビタミンB12(シアノコバラミン) | 正常な赤血球の形成に働くビタミン | |||
葉酸 | ||||
ビタミンC(アスコルビン酸等) | 消化管内で鉄が吸収されやすい状態に保つ。 | |||
その他循環器用薬 | ||||
生薬成分 | コウカ | 末梢の血行を促して鬱血を除く | ||
生薬成分以外 | ユビデカレノン 別名コエンザイムQ10 |
血液循環の改善効果を示し、動悸、息切れ、むくみの改善 | ||
ヘプロニカート | ニコチン酸が遊離し、末梢の血液循環を改善する作用を示す。 | |||
イノシトールヘキサニコチネート | ||||
ルチン | 高血圧等における毛細血管の補強、強化の効果を示す。 | |||
漢方処方製剤 | 三黄瀉心湯 ㋟ | のぼせ気味で顔面紅潮し、便秘傾向などのあるものの高血圧の随伴症状 | ||
七物降下湯 | 胃腸障害のないものの高血圧に伴う随伴症状 |