登録販売者試験の解説とポイントを過去問題にフォーカスして記載していきます。
厚生労働省の試験問題作成の手引きを基に分かり易い内容に変えて解説しています。
過去問題から作成したポイントテストもありますので、
是非解いて見てくださいね。
独学で学ばれている方も含め問題なく解けることが実感できるかと思います。
また第3章全体のポイントについては、第3章-1日目:Ⅰ-①:かぜ薬をご覧ください。
Ⅶ 内服アレルギー用薬
1)アレルギーの症状、薬が症状を抑える仕組み
アレルギーの原因となる物質=アレルゲン(抗原)は人によって異なります。
主なアレルゲン
- 食品(小麦、卵、乳、そば、落花生)
- ハウスダスト、化学物質、金属
- 季節性の花粉(スギ、ヒノキ、ブタクサ)
アレルギーの流れ
①アレルゲンが皮膚、粘膜より体内に入る。
②アレルゲンを特異的に認識した免疫グロブリン(抗体)が肥満細胞を刺激する。
③肥満細胞からヒスタミンやプロスタグランジンが遊離する。
④それら物質が周囲の器官、組織と反応し、血管拡張、血管透過性亢進などの作用を示す。
なお、蕁麻疹については皮膚への物理的な刺激によってヒスタミンが肥満細胞から遊離して生じる場合があります。
また、食品(特にサバなどの生魚)が傷むとヒスタミンや、それに類似した物質が生成され、摂取することで蕁麻疹が生じる場合もあります。
血管拡張、透過性亢進すると、、、
粘膜が赤くなったり、血管外へ水分などが漏れて浮腫みます。
鼻で言えば、鼻閉による鼻詰まりが起きます。
内服アレルギー用薬
蕁麻疹や湿疹、かぶれや皮膚の痒み、または鼻炎に用いられる内服薬の総称で、抗ヒスタミン成分を主体として配合されています。
また、抗ヒスタミン成分に、急性鼻炎、アレルギー性鼻炎または副鼻腔炎による諸症状の緩和を目的として、鼻粘膜の充血や腫れを和らげる成分(アドレナリン作動成分)や鼻汁分泌やくしゃみを抑える成分(抗コリン成分)などを組み合わせて配合されたものを鼻炎用内服薬といいます。
ポイントテスト1
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)アレルゲンとして、小麦、卵等の食品、ハウスダスト(室内塵)、家庭用品に含有される化学物質や金属等が知られている。
(2)アレルゲン(抗原)が皮膚や粘膜から体内に入り込むと、その物質を特異的に認識した免疫グロブリン(抗体)によって肥満細胞が刺激され、ヒスタミンやプロスタグランジン等の物質が遊離する。肥満細胞から遊離したヒスタミンは、血管収縮、血管透過性亢進作用を示す。
(3) 蕁麻疹は、アレルゲン(抗原)との接触以外にも起こることがある。
回答と解説
ポイントテスト1
(1)〇
(2)×:血管の収縮ではなく、拡張。
(3)〇
2)代表的な配合成分等、主な副作用
(a) 抗ヒスタミン成分
- クロルフェニラミンマレイン酸塩
- カルビノキサミンマレイン酸塩
- クレマスチンフマル酸塩
- ジフェンヒドラミン塩酸塩
- ジフェニルピラリン塩酸塩
- ジフェニルピラリンテオクル酸塩
- トリプロリジン塩酸塩
- メキタジン
- アゼラスチン
- エメダスチン
- ケトチフェンフマル酸塩
- エピナスチン塩酸塩
- フェキソフェナジン塩酸塩
- ロラタジン
抗ヒスタミンは英語で、Antihistamine=アンチヒスタミン
成分名は~アミンに類似した名前が多いです。
作用
肥満細胞から遊離したヒスタミンが受容体と反応するのを妨げます。(抗ヒスタミン作用)
服用時の注意点
- ヒスタミンは脳で覚醒の維持・調節を担っており、抗ヒスタミン成分により眠気が促されるため、乗物類の運転操作を避ける。
- 抗ヒスタミン成分は抗コリン作用も示すため、排尿困難や口渇、便秘などの副作用が現れる。
排尿困難、緑内障の場合には医師、薬剤師へ相談する。 - メキタジンについては、まれに重篤な副作用としてショック、肝機能障害、血小板減少を生じることがある。
- ジフェンヒドラミンは、一部が乳汁に移行して乳児に昏睡を生じるおそれがあるため、授乳中の使用は避ける。
(b) 抗炎症成分
- グリチルリチン酸二カリウム
- グリチルリチン酸
- グリチルリチン酸モノアンモニウム
- トラネキサム酸
皮膚や鼻粘膜の炎症を和らげます
生薬成分として、グリチルリチン酸を含むカンゾウが用いられることがあります。
(c) アドレナリン作動成分
- プソイドエフェドリン塩酸塩
- メチルエフェドリン塩酸塩
- フェニレフリン塩酸塩
鼻炎用内服薬では、交感神経系を刺激して鼻粘膜の血管を収縮させることで鼻粘膜の充血や腫れを和らげます。
メチルエフェドリン塩酸塩については、血管収縮作用により痒みを鎮める効果を期待して、アレルギー用薬でも用いられることがあります。
服用時の注意点(プソイドエフェドリン塩酸塩)
- 中枢神経系の作用が強く、副作用として不眠や神経過敏が現れることがある。
- その他、副作用として、めまいや頭痛、排尿困難がある。
- 心臓病、高血圧、糖尿病、甲状腺機能障害、前立腺肥大による排尿困難の症状を悪化させるおそれがあるため、使用を避ける。
- パーキンソン病治療薬のモノアミン酸化酵素阻害剤(セレギリン塩酸塩など)との併用により、プソイドエフェドリンの代謝が妨げられて、副作用が現れやすくなるおそれが高い。
- メチルエフェドリン塩酸塩を含め、依存性がある。
(d) 抗コリン成分
- ベラドンナ総アルカロイド
- ヨウ化イソプロパミド
副交感神経系の働きを抑え、鼻腔内の鼻汁分泌やくしゃみを抑えます。
ベラドンナはナス科の草本で、その葉や根に、副交感神経系から放出されるアセチルコリンの働きを抑える作用を示すアルカロイドを含有します。
アルカロイドとは、窒素原子を含む、天然由来の化合物のこと
(e) ビタミン成分
- ビタミンB6
(ピリドキシン塩酸塩など) - ビタミンB2
(リボフラビンなど) - パンテノール、パントテン酸カルシウムなど
- ビタミンC(アスコルビン酸)
- ニコチン酸アミド
皮膚や粘膜の健康維持・回復に重要なビタミンを補給します。
(f) 生薬成分
- シンイ
- サイシン
- ケイガイ
① シンイ
モクレン科のMagnolia biondii Pampanini、ハクモクレン、Magnolia sprengeri Pampanini、タムシバまたはコブシの蕾を基原とする生薬
鎮静、鎮痛の作用を期待して用いられる。
② サイシン
ウマノスズクサ科のケイリンサイシン又はウスバサイシンの根及び根茎を基原とする生薬
鎮痛、鎮咳、利尿等の作用を有するとされ、鼻閉への効果を期待して用いられる。
③ ケイガイ
シソ科のケイガイの花穂を基原とする生薬
発汗、解熱、鎮痛等の作用を有するとされ、鼻閉への効果を期待して用いられる。
漢方処方製剤
皮膚の症状を主とするもの
- 茵蔯蒿湯
- 十味敗毒湯
- 消風散
- 当帰飲子
鼻の症状を主とするもの
- 葛根湯加川芎辛夷
- 小青竜湯
- 荊芥連翹湯
- 辛夷清肺湯
これらのうち茵蔯蒿湯、辛夷清肺湯を除き、いずれも構成生薬としてカンゾウを含みます。
また、葛根湯加川芎辛夷、小青竜湯は、構成生薬としてマオウも含みます。
カンゾウ,マオウ,ダイオウを含む場合
それぞれ㋕,㋮,㋟で記載
皮膚の症状を主とするもの
(a) 茵蔯蒿湯 ㋟
体力中等度以上で口渇があり、尿量少なく、便秘するものの蕁麻疹、口内炎、湿疹、皮膚炎、皮膚の痒みに適す。
構成生薬にダイオウを含む
重篤な副作用に肝機能障害がある。
(b)十味敗毒湯 ㋕
体力中等度なものの皮膚疾患で、発赤があり、ときに化膿するものの化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、水虫に適す。
化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、急性湿疹に用いる場合は、漫然と長期の使用は避け、1週間位使用して症状の改善がしない場合、使用を中止して専門家に相談が必要である。
(c)消風散 ㋕
体力中等度以上の人の皮膚疾患で、痒みが強くて分泌物が多く、ときに局所の熱感があるものの湿疹・皮膚炎、蕁麻疹、水虫、あせもに適す。
(d) 当帰飲子 ㋕
体力中等度以下で冷え症で、皮膚が乾燥するものの湿疹・皮膚炎(分泌物の少ないもの)、痒みに適す。
鼻の症状を主とするもの
(e) 葛根湯加川芎辛夷 ㋕㋮
比較的体力があるものの鼻づまり、蓄膿症(副鼻腔炎)、慢性鼻炎に適す。
構成生薬にマオウを含む
(f) 小青竜湯 ㋕㋮
体力中等度又はやや虚弱で、うすい水様の痰を伴う咳や鼻水が出る気管支炎、気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、むくみ、感冒、花粉症に適す。
まれに重篤な副作用として、肝機能障害、間質性肺炎、偽アルドステロン症を生じる。
構成生薬にマオウを含む
(g)荊芥連翹湯 ㋕
体力中等度以上で皮膚の色が浅黒く、ときに手足の裏に脂汗をかきやすく腹壁が緊張しているものの蓄膿症(副鼻腔炎)、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきびに適す
まれに重篤な副作用として肝機能障害、間質性肺炎が現れる。
(h)辛夷清肺湯
体力中等度以上で、濃い鼻汁が出て、ときに熱感を伴うものの鼻づまり、慢性鼻炎、蓄膿症(副鼻腔炎)に適す。
まれに重篤な副作用として肝機能障害、間質性肺炎、腸間膜静脈硬化症が現れる。
ポイントテスト2
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)アゼラスチンは、肥満細胞から遊離したヒスタミンが受容体と反応するのを妨げることにより、ヒスタミンの働きを抑える作用を示す。
(2)トラネキサム酸は、皮膚や鼻粘膜の炎症を和らげる作用を示す。
(3)プソイドエフェドリン塩酸塩は依存性がないが、メチルエフェドリン塩酸塩には依存性があるため、長期間にわたって連用された場合、薬物依存につながるおそれがある。
(4) メキタジンは、緑内障の診断を受けた人では、症状の悪化を招くおそれがある。
(5)医療機関でモノアミン酸化酵素阻害剤が処方されて、パーキンソン病の治療を受けている人がプソイドエフェドリン塩酸塩を使用した場合、体内でのプソイドエフェドリンの代謝が妨げられて、副作用が現れやすくなるおそれが高い。
回答と解説
ポイントテスト2
(1)〇
(2)〇
(3)×:プソイドエフェドリン塩酸塩も依存性がある。
(4)〇
(5)〇
ポイントテスト3
( )の中に入れるべき字句の正しい組合せはどれか。
内服アレルギー用薬の漢方処方製剤のうち、( a )及び( b )は、皮膚の症状を主とする人に適するとされ、いずれも構成生薬として( c )を含む。
a b c
1 茵蔯蒿湯 葛根湯加川芎辛夷 マオウ
2 十味敗毒湯 葛根湯加川芎辛夷 マオウ
3 茵蔯蒿湯 当帰飲子 カンゾウ
4 消風散 当帰飲子 カンゾウ
5 消風散 辛夷清肺湯 カンゾウ
回答と解説
ポイントテスト3
正解は4
皮膚に用いる漢方は、茵蔯蒿湯、消風散、十味敗毒湯、当帰飲子であり、茵蔯蒿湯はカンゾウを含まないため、4となる。
3)受診勧奨
蕁麻疹や鼻炎等のアレルギー症状に対する医薬品の使用は、基本的に対症療法です。長期の連用は避け、5~6日間使用しても症状の改善がみられない場合には、医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
そのため、一般用医薬品には、アトピー性皮膚炎による慢性湿疹等の治療に用いるものはありません。なお、予防的にアレルギー用薬を使用することも適当ではありません。
アレルギー症状は皮膚症状が治まると喘息が現れるというように連鎖的に現れることがあり、その場合、医療機関で総合的な診療を受けた方がよいとされています。
また皮膚感染症により、湿疹やかぶれ等に似た症状が現れることがあり、その際は皮膚感染症の対処を優先する必要があります。
アレルギー用薬の場合、一般の生活者では、使用目的となる症状と副作用の症状(皮膚の発疹・発赤等の薬疹 )が見分けにくいことがあり、適宜注意を促していくことが重要です。
アレルギー症状を軽減するには、アレルゲンの除去・回避といった根源的な対応が重要です。
医療機関においては、アレルゲンを特定した上で、アレルゲンに対して徐々に体を慣らしていく治療法(減感作療法)もあります。
ポイントテスト4
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1) 皮膚症状が治まると喘息が現れるというように、種々のアレルギー症状が連鎖的に現れる場合は、一般用医薬品によって一時的な対処を図るよりも、医療機関で総合的な診療を受けた方がよい。
(2)一般用医薬品には、アトピー性皮膚炎による慢性湿疹等の治療に用いることを目的とするものがある。
(3)一般の生活者では、使用目的となる症状(蕁麻疹等)と副作用の症状(皮膚の発疹・ 発赤等の薬疹)が見分けにくいことがあり、医薬品の販売等に従事する専門家において適宜注意を促していくことが重要である。
(4) 皮膚感染症(たむし、疥癬等)により、湿疹やかぶれ等に似た症状が現れた場合、皮膚感染症への対処よりも、まずアレルギー用薬で痒み等の緩和を優先する必要がある。
回答と解説
ポイントテスト4
(1)〇
(2)×:短期的な対症療法のため、慢性湿疹の治療を目的としない。
(3)〇
(4)×:皮膚感染症への対処が優先。
ページ内の薬剤一覧
内服アレルギー用薬 | ||||
分類 | 成分名 | 作用 | ||
抗ヒスタミン成分 |
クロルフェニラミンマレイン酸塩 | 肥満細胞から遊離したヒスタミンが受容体と反応するのを妨げる。
抗コリン作用も示す |
||
カルビノキサミンマレイン酸塩 | ||||
クレマスチンフマル酸塩 | ||||
ジフェンヒドラミン塩酸塩 | ||||
ジフェニルピラリン塩酸塩 | ||||
ジフェニルピラリンテオクル酸塩 | ||||
トリプロリジン塩酸塩 | ||||
メキタジン | ||||
アゼラスチン | ||||
エメダスチン | ||||
ケトチフェンフマル酸塩 | ||||
エピナスチン塩酸塩 | ||||
フェキソフェナジン塩酸塩 | ||||
ロラタジン | ||||
抗炎症成分 | グリチルリチン酸二カリウム | 皮膚や鼻粘膜の炎症を和らげる。 | ||
グリチルリチン酸 | ||||
グリチルリチン酸モノアンモニウム | ||||
トラネキサム酸 | ||||
アドレナリン作動成分 | プソイドエフェドリン塩酸塩 | 交感神経系を刺激して、鼻粘膜の充血や腫れを和らげる | ||
メチルエフェドリン塩酸塩 | ||||
フェニレフリン塩酸塩 | ||||
抗コリン成分 | ベラドンナ総アルカロイド | 副交感神経の働きを抑え、鼻汁分泌やくしゃみを抑える | ||
ヨウ化イソプロパミド | ||||
ビタミン類 | ビタミンB6 (ピリドキサール、ピリドキシン) |
皮膚や粘膜の健康維持・回復に重要なビタミンを補給する. | ||
ビタミンB2(リボフラビン) | ||||
パンテノール、 | ||||
パントテン酸カルシウム等、 | ||||
ビタミンC(アスコルビン酸) | ||||
ニコチン酸アミド | ||||
生薬成分 | シンイ | 鎮静、鎮痛 | ||
サイシン | 鎮痛、鎮咳、利尿、鼻閉 | |||
ケイガイ | 発汗、解熱、鎮痛、鼻閉 | |||
漢方処方製剤 | 皮膚の症状 | 茵蔯蒿湯 ㋟ | 便秘するものの蕁麻疹、口内炎 | |
十味敗毒湯 ㋕ | 化膿性皮膚疾患 | |||
消風散 ㋕ | 熱感がある蕁麻疹、あせも | |||
当帰飲子 ㋕ | 皮膚が乾燥する皮膚炎、痒み | |||
鼻の症状 | 葛根湯加川芎辛夷 ㋕㋮ | 比較的体力のある蓄膿症 | ||
小青竜湯 ㋕㋮ | うすい水様の痰を伴う気管支喘息、鼻炎 | |||
荊芥連翹湯 ㋕ | 皮膚の色が浅黒く、ときに手足の裏に脂汗をかく蓄膿症 | |||
辛夷清肺湯 | 濃い鼻汁が出て、ときに熱感を伴う蓄膿症 |