登録販売者試験の解説とポイントを過去問題にフォーカスして記載していきます。
厚生労働省の試験問題作成の手引きを基に分かり易い内容に変えて解説しています。
過去問題から作成したポイントテストもありますので、
是非解いて見てくださいね。
独学で学ばれている方も含め問題なく解けることが実感できるかと思います。
また第3章全体のポイントについては、第3章-1日目:Ⅰ-①:かぜ薬をご覧ください。
ⅩⅢ 滋養強壮保健薬
1)医薬品として扱われる保健薬
滋養強壮保健薬は、体調不良や体質改善、特定の栄養素の不足による症状の改善・予防を目的として、ビタミン成分、カルシウム、アミノ酸、生薬成分などが配合された医薬品です。
医薬部外品の場合、効能・効果の範囲は、滋養強壮、虚弱体質の改善、病中・病後の栄養補給などに限定されています。
神経痛、筋肉痛、しみ・そばかすのような特定部位の症状に対する効能・効果については、医薬品においてのみ認められます。
ビタミン成分に関しても、1日最大量が既定値を超えるものは、医薬品としてのみ認められます。
生薬成分については、カシュウ、ゴオウ、ゴミシ、ジオウ、ロクジョウは医薬品においてのみ認められます。
ポイントテスト1
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)医薬部外品の保健薬の効能・効果の範囲には、滋養強壮のほか、神経痛、筋肉痛、関節痛、しみ・そばかす等のような特定部位の症状の改善が含まれる。
(2)医薬部外品の保健薬の配合成分は、人体に対する作用が緩和なものに限られるが、配合されるビタミン成分の1日最大量は規定されていない。
(3)生薬成分であるゴオウ、ゴミシ、ロクジョウの配合については、医薬品においてのみ認められている。
回答と解説
ポイントテスト1
(1)×:特定部位の症状は医薬品のみ。
(2)×:医薬部外品のビタミン1日最大量は規定されている。
(3)〇
2)ビタミン、カルシウム、アミノ酸等の働き、主な副作用
(a) ビタミン成分
- ビタミンA
(レチノール) - ビタミンD
(エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール) - ビタミンE
(トコフェロール) - ビタミンB1
(チアミン) - ビタミンB2
(リボフラビン) - ビタミンB6
(ピリドキシン、ピリドキサール) - ビタミンB12
(シアノコバラミン) - ビタミンC
(アスコルビン酸)
ビタミンは、「微量で体内の代謝の働きを担うが、自ら産生することができない、または産生されても不十分であるため外部から摂取する必要がある化合物」と定義されます。
脂溶性ビタミンでは、過剰摂取により過剰症を生じるおそれがあります。
脂溶性のビタミンは、ビタミンD,A,K、Eがあります。DAKE=「だけ」と覚えましょう。
① ビタミンA
ビタミンA主薬製剤:レチノール酢酸エステル、レチノールパルミチン酸エステル
ビタミンAは、夜間視力を維持したり、皮膚や粘膜の機能を正常に保つ栄養素です。
目の乾燥感、夜盲症(とり目、暗所での見えにくさ)、妊娠・授乳期、病中病後の体力低下時などに用いられます。
一般用医薬品におけるビタミンAの1日最大分量は4000国際単位となりますが、
妊娠前後3ヶ月に、1日10000国際単位以上摂取した妊婦の場合、新生児の先天異常の割合が上昇した報告があります。
② ビタミンD
ビタミンD主薬製剤:エルゴカルシフェロール又はコレカルシフェロール
腸管でのカルシウム吸収及び尿細管でのカルシウム再吸収を促して、骨の形成を助ける栄養素です。
骨歯の発育不良、くる病の予防、ビタミンDの補給に用いられます。
ビタミンDの過剰症としては、高カルシウム血症、異常石灰化があります。
③ ビタミンE
ビタミンE主薬製剤:トコフェロール、トコフェロールコハク酸エステル、トコフェロール酢酸エステル等
脂質の酸化防止(抗酸化作用)、細胞の活動を助ける栄養素であり血流を改善させる作用もあります。
末梢血管障害による肩・首すじのこり、手足のしびれ、しもやけの症状の緩和、月経不順、ビタミンEの補給に用いられます。
ビタミンEは下垂体や副腎系に作用してホルモン分泌の調節に関与し、生理が早く来たり、経血量が多くなったりすることがあります。
④ ビタミンB1
ビタミンB1主薬製剤:チアミン塩化物塩酸塩、チアミン硝化物、ビスチアミン硝酸塩、チアミンジスルフィド、フルスルチアミン塩酸塩、ビスイブチアミン
チアミンのみ覚えればOK
炭水化物からのエネルギー産生に不可欠な栄養素で、神経の正常な働きを維持する作用があります。
また、腸管運動を促進する働きもあります。
神経痛、筋肉痛・関節痛、手足のしびれ、便秘、眼精疲労、脚気、また、ビタミンB1 の補給に用いられます。
⑤ ビタミンB2
ビタミンB2主薬製剤:リボフラビン酪酸エステル、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リボフラビンリン酸エステルナトリウム
脂質の代謝に関与し、皮膚や粘膜の機能を正常に保つ栄養素です。
口内炎、口角炎、皮膚炎、にきび、肌荒れ、目の充血、目の痒みの症状の緩和、またビタミンB2 の補給に用いられます。
ビタミンB2 の摂取により、尿が黄色くなることがあります。
⑥ ビタミンB6
ビタミンB6主薬製剤:ピリドキシン塩酸塩またはピリドキサールリン酸エステル
タンパク質の代謝に関与し、皮膚や粘膜の健康維持、神経機能の維持に重要な栄養素です。
口内炎、口角炎、皮膚炎、にきび、肌荒れ、手足のしびれの症状の緩和、また、ビタミンB6 の補給に用いられます。
⑦ ビタミンB12
ビタミンB12主薬製剤:シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン塩酸塩等
赤血球の形成を助け、また、神経機能を正常に保つ栄養素です。
ビタミンB12にはコバルトを含有しており、貧血用薬に配合されています。
(鉄剤とその他循環器用薬の項を参照)
⑧ ビタミンC
ビタミンC主薬製剤:アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウムまたはアスコルビン酸カルシウム
脂質の酸化防止(抗酸化作用)、皮膚や粘膜の機能を正常に保つ栄養素です。
メラニンの産生を抑える働きもあるとされます。
しみ、そばかす、日焼けによる色素沈着の症状の緩和、歯ぐきからの出血・鼻血の予防、また、ビタミンCの補給に用いられます。
⑨ その他
皮膚や粘膜などの機能を維持することを助ける栄養素として、ナイアシン(ニコチン酸アミド、ニコチン酸)、パントテン酸カルシウム、ビオチンなどが配合されている場合があります。
(b) カルシウム成分
カルシウム主薬製剤:クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム
骨や歯の形成に必要な栄養素であり、筋肉の収縮、血液凝固、神経機能にも関与し、骨歯の発育促進、脆弱予防に用いられます。
過剰症としては、高カルシウム血症があります。
(c) アミノ酸成分
- システイン
- アミノエチルスルホン酸
(タウリン) - アスパラギン酸ナトリウム
① システイン
髪や爪、肌などに存在するアミノ酸の一種でメラニンの生成を抑え、排出を促します。また肝臓においてアルコールを分解する酵素の働きを助け、アセトアルデヒドの代謝を促します。
しみ・そばかす・日焼けなどの色素沈着症、二日酔い、にきび、湿疹等の症状の緩和に用いられます。
② アミノエチルスルホン酸
(タウリン)
体のあらゆる部分に存在し、細胞の機能が正常に働くために重要な物質です。
肝臓機能を改善する働きがあります。
③ アスパラギン酸ナトリウム
アスパラギン酸が、エネルギーの産生効率を高め、骨格筋に溜まった乳酸の分解を促します。
(d) その他の成分
- ヘスペリジン
- コンドロイチン硫酸
- グルクロノラクトン
- ガンマ-オリザノール
ヘスペリジン
ビタミン様物質のひとつで、ビタミンCの吸収を助けます。
かぜ薬にも配合されている場合があります。
コンドロイチン硫酸
軟骨組織の主成分で、軟骨成分を形成及び修復する働きがあります。
関節痛、筋肉痛等の改善を促すため、ビタミンB1と組み合わせられる場合があります。
グルクロノラクトン
肝臓の働きを助け肝血流を促進する働きがあり、全身倦怠感や疲労時の栄養補給を目的として配合されます。
ガンマ-オリザノール
米油から見出された抗酸化作用を示す成分で、ビタミンEなどと組み合わせて配合される場合があります。
ポイントテスト2
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)ビタミンB1は、炭水化物からのエネルギーの産生に不可欠な栄養素で、神経の正常な働きを維持する作用がある。
(2)ビタミンB6は、シアノコバラミンとして、ビタミン主薬製剤、貧血用薬等に配合されている。
(3)ビタミンDは、腸管でのカルシウム吸収及び尿細管でのカルシウム再吸収を促して、骨の形成を助ける栄養素である。
(4) ビタミンEは、タンパク質の代謝に関与し、皮膚や粘膜の健康維持、神経機能の維持に重要な栄養素である。
回答と解説
ポイントテスト2
(1)〇
(2)×:B6ではなく、B12。
(3)〇
(4)×:Eではなく、B6。
ポイントテスト3
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)ヘスペリジンは、髪や爪、肌に存在するアミノ酸の一種で、皮膚におけるメラニンの生成を抑えるとともに、皮膚の新陳代謝を活発にしてメラニンの排出を促す働きがあるとされる。
(2)アミノエチルスルホン酸(タウリン)は、肝臓機能を改善する働きがあるとされる。
(3)アスパラギン酸ナトリウムは、アスパラギン酸が生体におけるエネルギーの産生効率を高めるとされ、骨格筋に溜まったアセトアルデヒドの分解を促す等の働きを期待して用いられる。
(4)コンドロイチン硫酸は、軟骨組織の主成分で、軟骨成分を形成及び修復する働きがあるとされる。
回答と解説
ポイントテスト3
(1)×:ヘスペリジンではなく、システイン。
(2)〇
(3)×:アセトアルデヒドではなく、乳酸。
(4)〇
3)代表的な配合生薬等、主な副作用
生薬成分
- ニンジン
- センキュウ
- トウキ
- ジオウ
- ゴオウ
- ロクジョウ
- インヨウカク
- ハンピ
- ヨクイニン
(a) ニンジン
ウコギ科のオタネニンジンの細根を除いた根又はこれを軽く湯通ししたものを基原とする生薬で、オタネニンジンの根を蒸したものを基原とする生薬をコウジンということもある。別名を高麗人参、朝鮮人参とも呼ばれる。
神経系の興奮や副腎皮質の機能亢進等の作用により、ストレスに対する抵抗力や新陳代謝を高めるとされる。
(b) センキュウ、トウキ、ジオウ
血行を改善し、血色不良や冷えの症状を緩和するほか、強壮、鎮静、鎮痛等の作用を期待して用いられる。
(c) ゴオウ、ロクジョウ
ゴオウ:強心、血圧低下、興奮を鎮める。
ロクジョウ:強心、強壮、血行促進する。
詳しくは強心薬 、高コレステロールの項を参照
(d) インヨウカク、ハンピ
インヨウカク:
メギ科のキバナイカリソウ、イカリソウ、Epimedium brevicornu Maximowicz、Epimedium wushanense T. S. Ying、ホザキイカリソウまたはトキワイカリソウの地上部を基原とする生薬
ハンピ:
ニホンマムシ等の皮及び内臓を取り除いたものを基原とする生薬
いずれも強壮、血行促進、強精(性機能の亢進)等の作用を示す。
(e) ヨクイニン
イネ科のハトムギの種皮を除いた種子を基原とする生薬
肌荒れやいぼに用いられる。
ビタミンB2やビタミンB6、瀉下薬等の補助成分として配合されている場合もある。
(f)その他
主に強壮作用を期待して、以下のような生薬成分が配合されている場合もあります。
- タイソウ
- ゴミシ
- サンシュユ
- サンヤク
- オウギ
- カシュウ
漢方処方製剤
滋養強壮に用いられる主な漢方処方製剤
- 十全大補湯
- 補中益気湯
いずれも構成生薬としてカンゾウを含有
(a) 十全大補湯 ㋕
体力虚弱なものの病後・術後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血に適す
まれに重篤な副作用として、肝機能障害を生じることが知られている。
(b) 補中益気湯 ㋕
体力虚弱で元気がなく、胃腸の働きが衰えて、疲れやすいものの虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒に適す。
まれに重篤な副作用として、間質性肺炎、肝機能障害を生じることが知られている。
ポイントテスト4
下記問題を正誤で答えよ(回答は下)
(1)補中益気湯は、体力虚弱で元気がなく、胃腸の働きが衰えて、疲れやすいものの虚弱体質、 疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、寝汗、感冒に適すとされる。
(2) 滋養強壮に用いられる主な漢方処方製剤には、 十全大補湯や補中益気湯がある。
(3)ヨクイニンは、クロウメモドキ科のナツメの果実を基原とする生薬で、肌荒れやいぼに用いられる。
回答と解説
ポイントテスト4
(1)〇
(2)〇
(3)×:ヨクイニンはイネ科のハトムギの種皮を除いた種子を基原とする。
4)相互作用、受診勧奨
【相互作用】
滋養強壮保健薬は多く摂取したからといって改善が早まるものでなく、また、滋養強壮の効果が高まるものでもありません。
【受診勧奨】
滋養強壮保健薬はある程度継続して使用しますが、1ヶ月位服用しても改善しない場合には、栄養素の不足以外の要因が考えられるため漫然と使用することは避ける必要があります。
ページ内薬剤一覧
滋養強壮保健薬 | ||||
分類 | 成分名 | 作用・効果 | ||
ビタミン成分 | ビタミンA (レチノール) |
夜間視力を維持 適応:目の乾燥感、夜盲症(とり目) |
||
ビタミンD (エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール) |
腸:カルシウム吸収 尿細管:カルシウム再吸収 適応:骨歯の発育不良、くる病の予防 |
|||
ビタミンE (トコフェロール) |
抗酸化作用、血行促進 適応:血管障害による肩・首すじのこり、しびれ |
|||
ビタミンB1 (チアミン) |
炭水化物からのエネルギー産生 適応:神経痛、脚気 |
|||
ビタミンB2 (リボフラビン) |
脂質の代謝、皮膚機能の正常化 適応:口内炎、皮膚炎 |
|||
ビタミンB6 (ピリドキシン、ピリドキサール) |
タンパク質の代謝 適応:口内炎、皮膚炎、手足のしびれ |
|||
ビタミンB12 (シアノコバラミン) |
赤血球の形成 適応:貧血 |
|||
ビタミンC (アスコルビン酸) |
抗酸化作用 適応:しみ、日焼けによる色素沈着の症状の緩和 |
|||
カルシウム成分 | クエン酸カルシウム等 | 骨歯の発育促進、脆弱予防に用いられる | ||
アミノ酸成分 | システイン | メラニンの生成を抑え、排出を促す アルコール分解酵素の働きを助ける |
||
アミノエチルスルホン酸 (タウリン) |
肝臓機能を改善する | |||
アスパラギン酸ナトリウム | 骨格筋の疲労の原因となる乳酸の分解を促す | |||
その他 | ヘスペリジン | ビタミンCの吸収を助ける | ||
コンドロイチン硫酸 | 軟骨成分を形成及び修復する | |||
グルクロノラクトン | 肝臓の働きを助け、肝血流を促進する | |||
ガンマ-オリザノール | 抗酸化作用を示す | |||
生薬成分 | ニンジン | ストレスに対する抵抗力や新陳代謝を高める | ||
センキュウ | 血行を改善し、血色不良や冷えの症状を緩和する | |||
トウキ | ||||
ジオウ | ||||
ゴオウ | 強心、血圧低下、興奮を鎮める | |||
ロクジョウ | 強心、強壮、血行促進する | |||
インヨウカク | 強壮、血行促進、強精(性機能の亢進)等の作用を示す | |||
ハンピ | ||||
ヨクイニン | 肌荒れやいぼに用いられる | |||
漢方処方製剤 | 十全大補湯 ㋕ | 病後・術後の体力低下、疲労倦怠 | ||
補中益気湯 ㋕ | 元気がなく、疲れやすいものの虚弱体質 |